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第43話 一大事
何も既成事実はない。だが、ヤクザに同性愛は御法度だ。男,男,男の世界。
義理と人情で繋がった命がけの家族だ。そこに愛憎の入る余地はない。
大の同性愛嫌いの清田会長は激怒した。
「相手は誰だ? 相手を連れて来い!」
相手と言えるほど付き合いは深くない。キスしただけだ。本人たちは自覚がなかった。
華子が栄介から相談されたのは
「俺、好きな人がいるんだ。
華子と結婚出来ない。
風間の会長に謝るから、
結婚は無かった事にしてくれ。」
と言う事だった。栄介はまだ、ヤクザのしがらみを理解していない。
風間会長は
「面子(メンツ)を潰された、」
と言う事になるかもしれない、と華子は思った。父親は面子にこだわる。
「栄介、このまま私と結婚しよう。そして隠れてその人と付き合えばいいよ。
私が守ってあげる。」
ヤクザは面子の生き物だ。面子が立たなければ死ぬしかないと言うほどだ。
華子はその事を良く知っている。でも栄介はまだ青臭い事を思った。
「崇さんに俺の真(まこと)を捧げる。
俺は初めて人を好きになったんだ。」
一方崇は自分をもう止められない、と思っていた。
(俺は多分、殺されるんだろうなぁ。
その前に一度だけ、若を抱きたい。)
もし、清田会長の逆鱗に触れても,息子に危害を加えたりはしないだろう。
(殺されるのは、俺だけでいい。)
そんな覚悟で栄介と密会した。華子が手引きしてくれた。
華子の車に乗って栄介が海辺のホテルに来た。
崇も自分の車でそのホテルに向かった。
「じゃ、あたし、ここで帰るね。
あとは今井が送ってくれるから。」
清和会若頭補佐の今井と風間一家の一人娘華子が、栄介と崇の逢い引きを手伝った。
(組同士仲良くすればいいのに。)
華子はそんな事を思った。
(上辺だけでも、私と結婚すればいいのに。
栄介は世間知らずだ。あの崇っていう大工さんも、だ。)
崇と栄介、二人はホテルの部屋で、初めて抱き合ってお互いを見つけた。
(背水の陣、か。何だか変な気持ちだ。
これから心中するような気持ち。)
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