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第45話 極道の面子
次の日、今井に送られて栄介は帰って来た。
帰って来ても気持ちがフワフワしている。
全国の組関係から婚礼のための贈り物が続々と届けられる。
新築のお屋敷は仕上げに入っている。左官の棟梁と打ち合わせながら細かい化粧を施している。
「珪藻土の壁がいいねぇ。」
会長も下見に来てご満悦だ。
栄介の思い人が崇だと知らない会長は、その仕事ぶりを惚れ惚れと見ていた。
「小野田棟梁の仕事は見ていて気持ちがいい。
素晴らしい屋敷が出来上がりますね。」
跡目を襲名する義理場の準備と婚礼の準備で忙しくなるはずだったが、この所不穏な空気がある。風間組長に、事実を確認すると言う事でお帰り頂いてから、身辺が落ち着かない。
結婚が破談になるという事は、そんなに簡単ではない。
若の性癖云々。結果次第ではとんでもない言いがかりだ。叔父貴の片桐さんが心配している。
若のホモ疑惑。
「なんだって!栄介が同性愛者だと言うのか?」
「まだ、そうと決まった訳ではないのですが。
以前から縁談の話が出ると、何かと難癖を付けて断って来た経緯があります。
幼馴染の風間のお嬢とご婚約されてホッとした所ですが。」
今井の話に
「おまえなら、組の事は全てわかってるだろう、今井、本当か⁈」
確かになんでも知っている。何にも知りたくは、ないが。
栄介と崇は,それからも度々ホテルで待ち合わせては密会した。
「俺、こそこそ隠れて会うのはいやだな。」
栄介が可愛い事を言う。間に立って華子が上手くやってくれている。
「俺と華子の結婚の話が微妙な感じになって来たんだ。華子はこのまま結婚してしまえばいい、って言うけど。」
「華子さんが間に立ってくれて、ありがたいな。」
そんな嘘をつき続けるのが嫌だ,と言う。
晴れて自分たちの関係を明らかにして、お天道様の下を手を繋いで歩きたいのだ、と言う。
崇は、切った張ったの渡世の世界で、あえて日の目に晒すのはどうか?と思っていた。
いつも帰らなくてはならない時間になると、悲しそうにする栄介に、崇もつらくなる。
自分の大切な人の望みを叶えてやりたい。
「親父さんに本当の事を話すか?」
「うーん、それは無理かもしれない。
わざわざ事を荒立てなくても。」
若頭補佐の今井の意見だった。
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