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第46話 親父の怒り
このまま婚約が立ち消えになるのはまずい。
色々面倒な事になる。
華子は婚約を続けようと言った。華子自身は身を挺して犠牲になる覚悟だった。他の誰とももう結婚出来ない。それでも栄介の思いを応援してくれるという。
今井も、死んでも口は割らない、と約束してくれた。
そんな中で栄介は幸せそうだった。
「崇、愛してる。」
崇が笑って抱きしめる。
「栄介、離さない。」
魔が差した。ホテルの下の海岸を手を繋いで散歩していた。組員の家族がこの辺りの漁師だった。稚貝を撒いてハマグリを育てている。
この日はハマグリの成長具合を見に来ていた。
以前,義理場で見かけた栄介の顔を知っていた。
栄介は自覚がないが、誰もが振り向く美男子なのだ。この漁師も以前一度見て忘れていなかった。
「こんにちは。清田の若。
清和会にはお世話になってます。」
二人は慌てて繋いでいた手を離したが、一瞬で見抜かれた。
その違和感は家族を通してあっという間に広がった。
「清和会の三代目はホモ?
男同士,仲良く手を繋いで歩いていた。
若はそっちの趣味か?」
三流週刊誌さながらの噂は町中に広がった。
極道の世界にも、だ。
数日後、清和会の奥座敷に呼び出された二人は毅然として並んで正座していた。
華子も風間の会長も座っている。ずらり並んだ組員の前に、まるで晒し者のように、正座させられている。
清田会長は怒りにブルブル震えている。
今井が詰められた。会長は確かめるように
「おまえたちは愛し合っていると言うのか。
穢らわしい。私の一族に男色が混じるとは。
わかっておるな。この落とし前をどこに持っていくべきか。」
「組長、お待ちください。
若と小野田さんの思いは、本物です。
本気の命がけの、愛なんです。」
「今井、親に説教する気か?
鬼神丸を持って来い。叩き切ってやる。」
「組長!」
「お待ちください。私が年上です。
切るなら私を!」
崇が言った。組長は
「アンタはカタギだ。腕の一本でも貰おうか。」
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