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第3話

 俺は生徒会の使い走りで特別棟の一室へ向かっていた。  特別棟は各教科の準備室や教師の趣味で集めた各教科に通ずる備品、部活動の産物を詰め込んでおくためにあるようなもんで、生徒会室も特別棟にある。  空き教室も多いこの棟の一室……端の教室を片付けるために俺は派遣されていた。  というのも臨時教師がもうすぐ学園に来るから、その教師の為の一室を用意するということらしかった。  学会の権威や教授など、専門科目の教鞭をとるαには20代から30代の若いαも少なからずいる。そのサポートのために学園は各教科の副担当として臨時教師や非常勤職員を頻繁に受け入れていた。  端の教室がわざわざ選ばれたのは、良くも悪くも足を運びにくい場所にあるから、新米教師への洗礼だろうか。  職員室で借りた鍵を差し込んで、ドアを開けようとして、気が付いた。  既にこの教室の鍵は、開いている。  鍵の締め忘れだろうか?そう思いながらドアを開くと……中には、人がいた。  教室の壁には、ダーツボードがかけられ、壁には所狭しとルービックキューブの盤面の表のような紙が貼りつけられている。  また別の壁には、スクリーンが引っかかっており、その正面には映し出すためのプロジェクターが机に乗っている。  端の机の密集地には、麻雀卓やオセロのボードが設置されていた。  空いた床にはクッションや寝袋まで転がっている。  そんな中でダーツボードに向かって腕を上げ、その手にはダーツを持った男子生徒がこちらを、振り返った。  直感で認識する。この人はαだ。  フェロモンがそんなに強い方ではなさそうだが、それでもαのフェロモンを身に纏っている。 「……」  驚いて言葉を失う俺に、男子生徒はダーツに向けていた腕を降ろし気さくに近付いてきた。 「部活動?」 「……いえ」 「じゃ、この教室に何か用?あ、もしかして迷子?」 「……いえ、あの、ここ……臨時職員の持ち部屋になるんで……片付けに来たんですけど……」 「えっ?!」  男子生徒は驚いたように俺の目を覗き込んだ。 「なあーんだ。じゃあもうここは使えないな」 「ここは、って……あの、ここで一体何を……」  疑問を口にした俺に、彼は悪びれもせず言い放った。 「ここ、仲間との遊びに使ってんだよ、勝手に。気付いてる教師もいるけど、僕普段教師ウケいいから。黙っててもらってたんだよ」 「えっ……」  そんな生徒が学園に居るとは。  この学園は全寮制だ。  一人一部屋与えられている。  わざわざ空き教室なんかに自分のスペースを作る意味が無いのだ。 「隠れ家だったのに、見つかっちゃったな。君に」 「あの……このことは先生に……」 「言うのか?言っちゃうか」 「……いえ……でもなんで、こんなところに……」 「教室の隠れ家。男のロマンだろ」 「なるほど……」  俺は目の前の男子生徒に気圧されながらも会話を繋いでいく。 「で、片付けるんだっけ?」 「あ、はい」  俺は一応持ってきていた収納ボックスを2つ、床に積み上げる。 「全部僕のものってわけじゃないけど、まあいいや。この教室にあるものは僕の部屋に運んでくれたらいいよ。あとで仲間に返しに行くよ」 「えっ。自分で片付けてくれないんですか」 「君は片付けるために来たんだろ。僕だけでやるわけないじゃん」 「まぁ、はい……わかりました」

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