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第4話
俺は、壁のルービックキューブの表やスクリーンを取り外すと、収納ボックスに入れていった。
画鋲やセロハンテープなどの細かいゴミも収納ボックスに適当に入れる。
オセロのボードや麻雀卓は収納ボックスには入らないので、わざわざ片道一回のターンで運ばなければならない。
特別棟と寮までの道のりは、遠くもないが近くもない。
地味に時間がかかる道のりを、二人で何度も往復する。
「はあーっ……やっと片付いたな」
大方綺麗になった教室に再度戻り、彼が大きく伸びをする。
「あの……気になってたんですけど」
俺は聞き忘れていたことを彼に確認する。
「どうしてこの部屋を自由に使えてたんですか?空き教室って言っても、教室には鍵がかかってるはずで……普通は入れませんよね」
「ああ。スペアを予め作ってたから」
「……どうやって?」
「僕、去年まで生徒会役員だったんだよ。だから当時は職員室から特別棟の鍵を頻繁に借りてて、その隙に作った」
「えっ……生徒会だったんですか!?」
「うん」
去年、会長は1年は会長一人だけだったと言っていた。
ということは、目の前の彼は……その時は2年。今の、2年生の代に生徒会の座を乗っ取られた、3年生だ。
「ちなみに生徒会室の鍵もスペア、持ってるよ」
先輩はいたずらっ子のような表情でそう言って笑う。
「それは……返した方が良いのでは……」
「なんで?持ってるだけで使ってないし。まあ今後何かの拍子に使うかもしれないから一応ね」
「何かの拍子とは?」
「ははは。なんだろうね」
末恐ろしい。
そこはかとない怖さを感じながらも、俺は先輩を見る。
「あの、今日はご苦労様でした。片付け、手伝っていただいて助かりました」
「いいよ。僕らの持ち物だし」
そう言った先輩はふと気が付いたように俺に聞いた。
「そういえば、教室の片づけなんてわざわざ頼まれて来たってことは、君は生徒会か何かなの?」
「はい。生徒会で広報をやってます。1年の小鳥遊 栄純 です」
「ふーん。小鳥遊君。1年で生徒会入りするなんて凄いね」
「いえ……立候補で無理矢理滑り込んだんです。……それで、あの、先輩は……お名前だけでも、お伺いしても……」
尋ねる俺に、先輩は思案するようにうーんと首をひねる。
「言ったら、ここ遊び場にしてたこと、学園にチクる?」
「いえ、言いません」
「ならいいや。僕の名前は、志波 朱雀 。3年生。よろしく後輩君」
「えっ……」
俺は目を見開く。
片付いた教室で唯一かけられたままの時計の秒針が鳴り響く中、時が止まっているように感じられる。
今、なんて。
志波、朱雀。
中学の頃βだと噂になった――生徒会長。
その姿と面影だけでは、全くわからなかった。
探しても、見つからないわけだ。
俺は3年の、βに絞って先輩を探していた。
でも、実際に会った先輩はαだったのだから。
ずっと探していた、唯一の人だった。
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