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第5話

「志波、先輩……」 「どーも、志波先輩です」 「あのっ、俺……」  動揺の中、なんとか言葉を捻り出す。 「俺、先輩に憧れて……先輩のこと、ずっと探してました」 「え、急に?」 「急にじゃなくて……中学の頃から……先輩が、生徒会長だった頃に……」 「ああ。……じゃあ僕が生徒会長やってて問題起こしたのも、知ってるんだ?」 「……はい。先輩が、βだって……。でも、先輩は、αですよね……?」 「そうだね。……そういやαは、相手がαかΩかって、感じ取れるんだっけ」  どういうことなのだろうか。  先輩はβではなく、αだった。  そしてこの、αなら相手がαだとわかる、そんな当然のことを、まるで自分はそうじゃないかのような物言い……。 「で、僕のことを探してたっていうのは?生憎2学年も下の子に恨まれるようなことをした覚えはないんだけど」 「う、恨んでるとかじゃなくて!」 「違うのか」 「俺……先輩が好きなんです」 「……え、急に?」 「きゅ、急にじゃありません!!」  告白、してしまった。  引かれただろうか。  俺は先輩の顔をそろそろと眺める。  先輩は、別段引いた様子もなければ何かを考えている風でもない表情で、俺に告げた。 「好かれるようなことをした心当たりは無いけど……。慕ってくれる後輩がいるのは素直に嬉しいよ。ありがとう」 「そ、それじゃ……」 「ああ、連絡先でも交換する?」 「い、いいんですか?!」 「別にいいよ、それぐらい」  にこっと笑った先輩が俺と連絡先を交換する。 「あ、あの、俺、いっぱい話しかけても良いですか?」 「うるさいのはかなわないけど、別にいいよ」 「ヤッ……」  ター!!!  俺は叫び出しそうになるのを抑えて、両足を地にしっかりと付けた。 「それじゃ、僕、部屋に帰るから。またね、小鳥遊君」  先輩はそう言い残して教室を出て行く。  あれほど物で溢れていたこの教室にも、何の未練もないかのように。  その態度がやけに中学の頃の、悪い噂に包まれながらも一切それを気にしていないようだったあの時の姿とだぶる。  ……本物だ。  俺はついに、出会ってしまった。  3年間も憧れていた志波先輩の実物と、喋るどころか連絡先まで交換してしまった。  告白は適当にかわされたような気がしなくもないが、俺に与えられた時間は短い。俺がαとして他のαより抜きんでている間……つまり他のα達のα性が開花しだす前に、先輩のハートを射止める。  俺に与えられたミッションは難題だった。 「よし。毎日先輩に連絡しよう」  そう決めると俺は職員室に特別棟の鍵を返し、生徒会室への帰り道を急いだ。

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