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第6話
『……おもしれー奴。お前、俺のモノになれ』
『誰が!この学園の生徒がなんでもお前らの言うことを聞くと思うなよ』
俺は自室で、TVで流れているドラマを眺めていた。
学園もので、いわゆる王道ものだ。
学園を意のままに操る財閥のαの御曹司グループにβの主人公が目を付けられ、グループのリーダー的存在との恋が展開されるというベタな恋愛ものである。
αとβの恋愛もののドラマや漫画、小説はこの世界の恋愛もののコンテンツの7割を占めていると言っても良い。人気の恋愛ものは殆どがαとβのカップルだ。
まあβの人口が多いから当たり前なのだが。
現実世界においてもこういった恋愛もののコンテンツのように、番関係になれるΩを差し置いて実際にβと付き合い、ゴールインするαも稀に居る。
俺もついこの間までは、そんなβとの恋愛を夢見ていた。
そう、志波先輩と付き合えはしないかと、そんな想像に胸を膨らませていたのだ。
しかし実際に目の前にした先輩はαだったわけだが――それはなぜなのか、疑問を頭の片隅に残しながらも、俺は先輩に電話する。
数コールで簡単に電話に出てくれた先輩に心が歓喜する。
「先輩!今暇ですか?」
『暇っちゃ暇だけど。風呂あがったばっかりでまだ体も拭いてないから……スピーカーにするよ』
「アッ……ハイ」
しゅるると布の擦れるような音が耳に届く。
身体もまだ拭いてないって……。裸。
俺は水も滴る濡れた髪の先輩を想像しながら、邪な気持ちを打ち消すかのように一方的に話し始める。
先輩の裸を想像してちょっと身体が高ぶったのは、先輩には内緒だ。電話じゃ、俺の様子なんて声以外じゃ伝わらない。
「あの、今ドラマ見てて……『花に恋咲け』ってタイトルで花恋っていうんですけど」
『あー、あれね。クラスの女子が騒いでた。見たことねーけど。面白いの?』
「はい。今、αのリーダーが主人公のβに猛アタックしているところで……」
先輩は俺の話を遮らずに、時々相槌を打っては笑ったりする。
俺は毎日のように先輩に連絡する中で、こうして時折何の用もなく電話までする仲にまでなっていた。
先輩は、そのほとんどの電話にたった数コールで出てくれるという好感触を示していた。
最初に告白をした一回きり以降、俺から大したアクションは仕掛けていないが、俺の好意は先輩に伝わっている筈だ。
友達以上、恋人未満。
それぐらい親密になったのではないかと、勘違いしそうになるくらい順調だった。
ブオオーッと髪を乾かす音で会話が途切れるが、髪を乾かし終わった先輩は何事もなかったかのように通話を続ける。
俺もそれに応えるようにして色んな話題に飛び移る。
「そういえば先輩って、麻雀打つんですか?あの教室に麻雀ありましたよね」
『うん。ちょっとだけね』
「俺もやってみたいです。今度教えてくださいよ」
『まだ僕の部屋に卓あるから、じゃあ今度僕の部屋来なよ』
「えっ……」
『何?』
「いえ!!行きます!!行かせてください!!」
まさか、先輩の部屋にもう一度行けるとは!!
先輩の部屋には、あの空き教室を片付けた日から足を運んだことは無かった。
本当は階も部屋番号もしっかりばっちり覚えているのだが……流石に部屋にまで押し掛けると、ストーカーみたくなってしまうので控えていたのだ。
『じゃ、明日の放課後にしようか』
「はい!じゃあ明日、先輩の部屋に遊びに行きますね!!」
『オッケー。あ、僕の部屋は』
「11階の304号室ですよね?!」
『えっ……そうだけど……なんで覚えてんの』
「アッ……」
気まずい空気が俺達の間に流れる。
『あはははっ!面白いね、君は』
「い、いえ……滅相もない」
そんな空気を破るように、先輩が笑う。
俺はほっと胸を撫でおろしながらも、小さな声で応えた。
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