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第7話
先輩の部屋に行くのに、俺は無駄に荷物を抱えていた。
2Lのペットボトルのジュースが2本に、ポテチ、チョコ、クッキーなどのお菓子。
麻雀を教わりに行くと言った手前、これはおかしいかもしれないが、もし暇になった時用に雑誌。カードゲーム。
生徒会の活動を終えてから学園内のスーパーに寄り、そのまま直行してきたので生徒会の議会案のアイデアの書類などもかさばっていた。
俺は浮かれていた。
先輩の部屋!
二人きり!
これまさしく部屋デート!!
付き合っているわけではないが、先輩も親しくなった俺を部屋にまで招いてくれるのだから後輩としては「特別」だろう。
そんな気持ちで先輩の部屋のインターホンを押す。
『はーい、ちょっと待ってな』
すぐに応答があり、ドアの施錠が解除される音がする。
「いらっしゃい、小鳥遊君」
「先輩……!」
先輩は部屋着に着替えていた。
学園では学年差があることもあって先輩を見かけることは全くといっていいほど無いので制服姿も見慣れているわけではないが、部屋着はまた別にクるものがある。
ああ、今日俺はここに来てよかった……!
そう天を仰ぎそうになった時だった。
「朱雀ー?お客さん?」
部屋の奥から、小さな影が一人。
長い髪に、甘い声。
女子。
フェロモンで、わかる。
Ωだ。
荷物を握り締めていた両手から、力が抜け落ちる。
ドサドサッと荷物がフロアの床に落ちる音がする。
「……小鳥遊君?」
「……ッ」
俺の顔を不思議そうに覗き込んだ先輩から逃げるように、俺は走り出した。
エレベーターの矢印ボタンを、連打する。
さっき俺を運んで来たばかりのエレベーターはもう既に別の階に移動しているようで、すぐにはドアは開かない。
「ちょっと!小鳥遊君!!」
俺を追いかけてきた先輩に捕まる。
「っ放してくださいっ……」
「い、嫌だよ。どうしたんだよ急に、走り出して。荷物も置いてっちゃってさ」
先輩は俺を追いかけてきていたが、あの女子は部屋の中に留まっているようだった。
やっとエレベーターが着いてドアが開くが、乗り込もうとする俺の首根っこを先輩が掴む。
「引き止めないでください!」
「なんでだよ。てか、どこ行くんだよ。僕の部屋に遊びに来たんじゃなかったの君」
「っそうですけど……」
「けど何?」
一定時間経っても誰も乗らなかったエレベーターが閉じて、またどこかの階に移動していく。
「先輩、気付いてますよね。俺の気持ち」
「……小鳥遊君の?」
「俺、先輩と結構仲良くなれて、一人で勝手に浮かれてました」
「……」
「俺、先輩と部屋デートでもする気分で今日来たんですけど」
「……」
「なんですかあの人。Ωですよね。……先輩の、番にでもなる人ですか?俺が先輩のこと好きなのわかってて、見せつけるために、今日呼んだんですか?俺を諦めさせるために?」
「……違う」
「何が違うってんですか」
涙で目の前がゆらゆらと揺らぐ。
涙声で、情けなく、先輩を問いただす。
先輩は必要最小限の否定しかしない。
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