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第2話

 東雲が放つ壮絶な色気は普段、Ωやβ、女性の生徒・教師たちを惹きつけて止まない。  顔面こそ美しいと形容されるような見た目をしているが、体躯はαらしくがっしりとしていて、αとしても強い部類だとわかるフェロモンを身に纏っている。立ち振る舞いもαらしく、その一挙手一投足がΩやβ、女性たちを喜ばせる。  同性であるαのみが、彼の色気に惑わされることなく東雲のαフェロモンへ対する同族嫌悪でもってその色気を撥ね退け、いわゆる「普通の」態度で接することを可能にしていた。  こんな動画の過去など、無かったかのような男に東雲は成長を遂げていた。  俺は動画を繰り返し再生する。  問題は、東雲が生徒会顧問であることだった。 この学園ではαの優秀な者の中から小学校では『お茶会』、中高では生徒会に招集されることとなっている。このお茶会と生徒会は学園の権力そのものだ。 今年高校生になり、1年にして生徒会に勧誘され庶務の座に納まった、αの中でも頭一つ抜けて優秀な俺――九十九(つくも) 那留(なる)は、庶務という雑用・使い走りの役職通り、東雲と顔を合わす機会が他の役員や生徒よりもはるかに多かった。  東雲のこんな過去を知ってしまったからには、もう俺は平気な顔をして東雲と顔を合わせることは難しいだろう。  ハッカーなんてやっているのだから面の皮が厚いのではと思われるかもしれないが、ネットの世界では万能な俺も現実世界では焦れば冷や汗にまみれ、おかしければ笑いを我慢することはできない。勿論ドラマや漫画にありがちな、ハッカーは情報で人を追い詰めるだけでなく冷徹で人を殺す様な眼差しで人を見る……なんてこともなく。ハッカーであり、生徒会に招集されるような強いαでありながら、現実世界の俺はごく普通の高校生らしい高校生だった。  人の弱みをPCのフォルダに集めて保存しているのはあくまで趣味のようなもんだ。実際に使用したことは1度や2度……や3度や4度……いや5度か6度……もっとあるかもしれないがまあそんなに無い。  携帯端末に動画データをコピーし、端末の動画データはパスワードでロックする。  俺は明日の学校の準備をするためにPCの電源を落とした。

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