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第3話

「庶務。書類東雲のとこに持ってけ」  会長が俺に指示を飛ばす。 「はーい……って、げ。書類って、ただの紙じゃなくて書類の山じゃないですか!!」 「当たり前だろ。一気に持って行った方が効率が良い。お前も何往復もしなくて済むんだからその方が良いだろ」 「一気に書類確認してもらうのも時間かかるんですよ」 「その方が良い。会計と書記はもう帰ったし、広報も学園内にポスター張り出すので時間食うから今日は暫く帰ってこない。あとはお前だけだ」 「どういう意味……あっ……」  顔を上げると、副会長と目がかち合う。  会長と副会長は、付き合っている。  なんでも運命のΩとの出会いをも乗り越えたα同士のビッグカップルだそうで。  会長の台詞からして……はやく二人きりになりたいということなのだろう。 「イッテキマース……」  カタコトで一応挨拶の言葉を残し鞄を肩に引っ掛けると書類の山を抱えて生徒会室を出る。  焦った様子の副会長に引き止められたが俺だって会長には逆らえないのだ。会長と二人きりになった副会長がどうなるのかは俺の知ったことではない。  書類を東雲に届けたら今日はもうこのまま帰ってしまおう。  俺はそう決めると特別棟の東雲の部屋を目指した。  特別棟は、教師たちの所詮持ち部屋のような教室が並ぶ棟だ。準備室や、教師の趣味で集められた教科に通ずる備品を詰め込んだり、部活動の産物の置き部屋にも使われている。  大体の教師は授業が無い時間や職員室での仕事を終えた後は特別棟の自分の教室で休息を取っている。  全寮制のこの学園だが、教師は寮住まいの者は少ない。  東雲も学園外から毎日通ってきているようで、朝早くに来たら仕事を終えて夜遅くに帰るまで、この特別棟くらいにしか居場所が無いのだろう。大抵持ち部屋に居た。  俺は教室のドアをノックすると返事も聞かずに扉を開け、東雲の座っているデスクへと向かう。 「東雲、生徒会の書類」 「先生を付けろ」  書類の山を見てなぜこんなに溜まるまで持ってこなかったのかと東雲が顔を歪める。  会長の思惑です。  俺は明後日の方向を見ながら非難の目を逃れる。 「……カクニンお願い、します」 「待ってろ」  俺の目の前で東雲が書類に目を通しだす。 「コピー取るトキ、言ってください」 「……お前」  ふと東雲が顔を上げる。 「なんだその態度は」 「エッ!?」 「なんだその声は」  声が裏返り、明らかに様子のおかしい俺を東雲が問い詰める。  昨日、あんたのポルノ動画を見つけてしまったからです。  とは、言えない。  俺もこんなに態度に出てしまうとは思っていなかった。  いつも誰かの弱みを手にしても、遠巻きに眺めているのが殆どで、本人に接触を図る機会は少なかった。  もし接触するようなことがあっても、大抵は相手を追い詰め切った俺の勝ち確の場面でしか会話をすることもない。  他人の弱みを握った人間が本人と普通に接するのは案外難しいものなのだな……と思いながらも、俺はごまかす。 「な、な、なんでもナイデス」 「嘘つけよ、アホみたいになってるぞ。来日したての外国人かお前は」  そんなに?  いや、しかしここはしらを切り通す他ないだろう。  東雲が男たちに犯されている動画をこの学園の生徒が持っているなんて、俺にとっても東雲にとっても毒にしかならないのだ。

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