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第3話
リビングに戻って来るととりあえず彼をソファーに降ろす。
自分の額に滲む汗を肩口で拭って、とりあえずもう一度キャリーケースの中を確認するためにケースを引き寄せた。
彼…いや引き取ると決めたのだから美波でいいだろう。
美波が入っていた反対側には通帳とキャッシュカードとメモ書きが入っている。
名義は高橋己咲となっており、美波の為に貯めた金で当面の生活費として使ってくれと書いてあった。
額面を見るとそこそこの金額が貯まっていたので“ご主人様”には内緒で貯めた物なのか、美波自身が何かさせられた時の金銭なのかは定かではない。
しかしながら美波の腕を見る限り、直近ではかなり手酷く扱われていたのが伺えるので売春等させられていた可能性は捨てきれない。
彼等の“ご主人様”も年齢と共に性欲が減退して他人にさせているのを見るのを楽しむという事も考えられるなとぼんやりと思う。
「これだけか…何も入ってないよりマシだな」
通帳以外は服なども入っておらず、本当に急いでいたのかそもそも美波は何も与えられていなかったのかは本人に聞いてみないと分からない。
メモの続きには“ご主人様”が手を回して美波の失踪宣告の申し立てをしており、既に受理されているので美波名義の通帳が作れなかったと綴られている。
現在美波は戸籍上は死亡した人間と言うことになっているわけだ。
それはさぞかし人権など無い扱いを受けていても不思議ではないなと納得してしまう。
キャリーケースのファスナーを閉めて、とりあえず玄関にでも置いておこうと持っていく。
後日捨てるなり何か考えておこう。
キャリーケースの中は彼等の“ご主人様”の体液が所々についていて時間の経過と共に悪臭がしはじめている。
「まずは…薬でも塗る?かな?」
リビングに戻ってこれからこの子に何をしたらいいのかと考えるが、まずは傷の治療からだろうか。
必要な物を持ってソファーの回りに置く。
持ってきた物の中から市販の傷薬を手に持ってはみるが、薬を塗るような外傷らしい外傷は見受けられない。
では別の患部でも見てみようかと美波の足に手を置くと、意識が無いにも関わらず勝手に足がぱかっと開いた。
キャリーケースから出す時にも感じたが、無意識でも目の前の人物に足を開く様に何度も反復して躾られたのだろう。
体勢を整えてやる為にソファーに横たえてやる。
足は開いたままなので、とりあえず観察しやすくするために腰の下にクッションを挟んで少し高くした。
孔は相変わらず期待しているのかひくひくと震えている。
「はぁ…状態確認。状態確認」
粘膜に触るのでもう一度ゴムの手袋を手につけた。
孔の縁に指を置くと誘うように孔が更にパクパクと開閉をはじめた。
誘われるままにゆっくりと指を挿入すると、ローションなどの潤滑剤を使っていないのにすんなりと指を受け入れる。
指を動かしていないのに肉壁がうねうねとうねって私の指を奥まで誘導するので、胎内をなぞる様にぐるりと回すと美波の足がびくりと跳ね少し腰が浮く。
いたずら心が芽生えたが、それをぐっと我慢して状態確認をするだけだと自分に言い聞かせる。
その間も美波の胎内は更なる刺激を求めてきゅうきゅうと指を締め付けてきた。
指を少し抜いて、指を増やして挿入する。
胎内でぐっと指を開いて中を見るのに少し身体を傾け、胸に差していたペン型のライトで照らしてみた。
精液などの残留物もない。
ライトを消して研修医時代の触診をなんとか思い出しながらしこり等ないかを調べる。
「ふぅ。んっ…」
「ごめんね。もうすぐ終わるよ」
こんな刺激にも感じるのか、美波から切ない声が漏れはじめる。
ちょっとの刺激にも反応するし、指もぎゅうぎゅう締め付けてくるし少し無理矢理だが肉を押し広げながら触診を続けた後に指を抜く。
先にこっちからにすれば良かったと思いながら汚れた手袋を外してゴミ箱に捨ててから腹部の触診をする。
足を閉じさせ、膝を立てたまま内臓の硬さや腫瘤を探す。
触った感覚的に内蔵の肥大などは感じられないので少し安心した。
そう言えばと顔を覗き込み下まぶたを下げる。
少し白っぽいのでもしかしたら貧血気味かもしれないなと思った。
唇に手を当てて少し口を開かせる。
歯があって変に感動してしまった。
口淫をしやすくする為に歯を全部抜去してしまうと聞いたことがあったので心配したのたが大丈夫の様だ。
一応何度目かの手袋を装着して歯の動揺など無いのか触ってみるが入れ歯などでもない様だった。
途中指を吸おうとする仕草をしたのですぐに手を外して後片付けをはじめ、手袋を着け外ししていると研修医時代を思い出す。
手袋を外してアルコールで手を消毒しながらまずは普通の診察の様に上から診察すれば良かったなと思った。
自分もこの状況に思いの外テンパっていたのだと実感する。
「そういえば髪を乾かしていませんでしたね」
頭に巻いたタオルが目に入りまだ髪すら乾かしていない事に気が付いた。
相当動揺していたんだなと思いながらゴミを持ってバスルームに向かう。
美波がくるまれていたバスローブ的な物をゴミ袋に入れて口を結ぶ。
ドライヤーとゴミ袋を持って玄関に行き、キャリーケースの横にゴミ袋だけ置いた。
ドライヤーを片手に歯は普通にあるので固形物も食べられるだろうと考えながらリビングに戻る。
「これで本当に玩具なんてしていたのでしょうかね?」
ソファーの上で先程と同じ体勢のまま動かない美波は腰だけを少し浮かせてヘコヘコと振っている。
触診に感じてしまったのだろうが、こんなに敏感でよく“ご主人様”の性奴隷をしていたものだと感心してしまったがはたと腕の注射痕が目に入って考えを改める。
敏感過ぎて性奴隷をやれていたのか心配ではなく、性奴隷だから敏感にさせられていたのだ。
メモ用紙にも既に死亡した事になっているとあったので、彼の“ご主人様”にはより好都合な玩具だっただろう。
怪しい薬を使って本当に死んでしまってももう1人ずっと飼っている性奴隷が居るし、この子はスペアか本当に都合のよいペットの様に扱っていたのかもしれない。
そんな事を考えながらコンセントにプラグを差して温風を出す。
静音設計のドライヤーだがどうしてもモーターの音がうるさい。
しかしこんなにうるさいのにこの音でも目を覚まさなかった。
「うーん。まずは散髪からかな?」
髪が乾くと現状が見えてきた。
髪はのび放題なのだが、こちらもプロの仕事ではないのがすぐ分かる。
切り口はガタガタで、長さも揃っていない。
栄養状態も悪いせいか、触るとパサパサとしている。
でも定期的にお風呂には入れていたからかシャンプーが泡立たないという事はなかった。
そんなチグハグな状態に私は頭を捻る。
普通なら頭頂部から下、内側になるにつれて髪が短くなってくのが一般的なのは全て髪を垂らした時に均一に揃える為だと私の元セフレがそう言っていた。
私の元セフレは大学時代ずっと付き合っていたのだが現在、何故か私の大切な人の元婚約者と結婚していて大きな病院の跡取りとして働いている。
大切な人の弟と付き合っていて髪も切ってやる程甲斐甲斐しく世話をしていたのに何があるか分からないものだ。
ある時、私が大切な人の弟の髪が綺麗だと褒めたら私に話しかけられ嫌そうながら少し得意そうに言っていた。
しかし目の前の美波の髪は下が長く頭頂部に行くにつれて短くなっている。
試しに襟足の髪を持ち上げてみるとすぐに理由が分かった。
「益々謎なんだが…」
手櫛で髪を整えてやりながら髪を頭頂部付近で手で纏めると垂れている髪の長さが揃った。
これはツインテールやポニーテールなどにした時に違和感のない髪の長さなのだろう。
キャリーケースに押し込まれている時は髪はぐちゃぐちゃで所々絡んでいたのでこの残バラ頭がこの為だとは想像もしていなかった。
手を離したが少し指に髪が引っ掛かり引っ張ってしまうかたちになると、美波の身体がびくりと緊張したのが分かる。
普段から髪を引っ張られていたのかもしれない。
今は全て憶測の域を出ないが過酷な生活を送っていたのだろうという事は意識が無くても仕草で痛いほどよくわかる。
私はこの子の面倒を見きれるのだろうかと少し不安になってしまう。
「まぁ、まずは君の目が覚めてからかな」
完全に腰の動きが止まってすぅすぅと小さな寝息が聞こえてきた。
流石にバスタオルを敷いただけの格好では可哀想だと思ってクローゼットに向かう。
Yシャツとスーツばかりで大した服が無い。
とりあえず以前使っていたスポーツウェアが無難だろうと引っ張り出す。
あまりカジュアルな服装を好まないので人に着せられるゆったりとした服がこれくらいしかなかったのだ。
下着は新品の物を出した。
いざ美波に着せてみるとウエストはブカブカなのに臀部がキツそうだし、上着も胸の部分がピチピチだがファスナーを閉めると少し袖の部分が余っている。
これって市販品で合う服はあるのだろうかと違うことが心配になってきてしまう。
色々と前途多難だなと美波の頭を撫でた。
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