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『百八本の赤い薔薇』それは、『結婚してください』『永遠の愛を誓う』。そんな花言葉がついている。
(つまり……? それは……?)
「プロポー……ええーっ」
僕は混乱して大声を上げる。
「えっ結婚?! 男同士って結婚できるのっ。ええっいいのっ、いっくんはいいのっ? お母さんは大丈夫なのっ」
あわあわしてよくわからないことを口走ってしまう。
「どうどう。落ち着いて落ち着いて」
樹が苦笑いする。
「はい、深呼吸」
言われるまま何回か深呼吸してなんとか落ち着いた。それを待って樹が仕切り直しをする。
「卒業して就職が決まったら言おうと思ったんだ。俺と結婚……法律的には男女の結婚とは違うけど。でも気持ちはそれと変わらない。ずっと俺と一緒にいてくれ」
真摯で熱い樹の気持ちが伝わってきて僕の胸も熱くなる。目もうるっとしてきた。
「いっくん! 勿論だよ! 僕もいっくんとずっと一緒にいたい」
「ナナ……ありがとう。これ、受け取って」
「うん」
僕は樹から赤い薔薇の花束を受け取った……が抱えきれず二人で持つような状態になった。
樹が上から僕の顔を覗き込んでいて次第に顔が近づいてくる。僕は少しだけ背伸びをしてゆっくりと目を閉じた。
ふわあっと唇を温かなもので包まれた。
* *
白いテーブルクロスの上には大きめの肉をよく煮込んだビーフシチュー。パンチェッタのシーザーサラダ。バゲットのカナッペ。それからよく冷やした白ワイン。
この家に唯一ある花瓶に十本程の赤い薔薇を生けてテーブルの中央に置く。残りはバケツの中なので、なんだか申し訳ない気もするが仕方がない。明日にでも新しい花瓶を買ってくることにしよう。
(それにしても……通りで帰りが遅かったはずだよ。あの花束を買いに行ってたんだ。スーツでキメたイケメンがあんなに大きな赤い薔薇の花束持って歩いてたら、めっちゃ目立ってたろうな。写真でも撮られてたかも)
その光景を思い浮かべて僕はくすっと笑った。
「いっくん、卒業おめでとう。それから新卒採用おめでとう、これで念願の先生だね」
「ありがとう。あと、同棲一周年おめでとう、だろ」
ワインの入ったグラスをシャンと合わせ鳴らす。
「え? 同棲? 同居じゃないの? 今までずっと同居だと思ってたよ〜」
そう言うと樹は額を押さえていた。
「俺的には同棲だけど。まあ……どっちでもいいよ」
「そう?」
うんうんと頷きながらビーフシチューを一口、口に入れる。
「お、美味い」
「ほんと?」
褒めて貰えて嬉しくなったけど。
「でも、ごめん。大したもの作れなくて。せっかくのお祝いだから、もっと豪勢なもの作れればいいんだけど」
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