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 情けなさでいっぱいになった。 「なんで? これ昨日から煮込んでた奴だろ? 手を掛けてくれて愛情感じるよ」  直球でこられてぽぽぽーっと顔が熱くなる。 「昼間からワインってのもサイコーだし」 「うん。昼間から飲むってのもどうかと思ったんだけど。でも今日は特別! このあとはもう家でゆっくりしよう?」 「だな。またお互い忙しくなるから今日くらいはゆっくりしたい」 (今かな!)  さっきから『これ』を渡すタイミングを計っていた。膝の上に載っている、テーブルの下に隠していた『これ』を樹に向かって捧げた。 「いっくん、これ。その……たいしたものじゃないんだけど」  大学院生活は忙しい。バイトもそんなには入れない。実を言うと家賃折半もお互い親に甘えていたが、生活費はバイト代の中から出している。残ったお金を貯めていてもそんなにはなかった。 「ありがとう」  樹は嬉しそうな顔で受け取る。 「開けていい」 「うん」  がさごそ包みを開けて出てきたのは自分的にはちょっと高価な財布。見た目は凄くシンプルだけど。 「おおー。いいじゃん、ありがとう」 「うん」  ありきたりと言えばありきたりだけど。あまり自分のことに構わない樹の財布はもうかなりぼろぼろだった。キャッシュレス決済も多くはなってきたが全く使わないこともないだろう。  樹は丁寧に箱に戻してテーブルの上に置く。  何故か、こほんっと一回咳払いをした。 (ん? 何かな?)  樹はさっき僕がやったみたいにリボンのついた小さめの箱を僕に向けて捧げた。 「え?」  呆然としている僕に、 「受け取ってくれる?」  真面目な顔で言うので僕は更に「?????」となった。 「え、また、僕に? ありがとう」  恭しく受け取ると「今すぐ開けて!」と言いたそうに見つめてくるので、すぐに開け始めた。包装はなくマグネットのついたリボンで閉じてある。リボンを外しパカッと箱を開いた。 「いっくん……これは……?」  小さな箱には二つのシンプルなシルバーリング。 (これはひょっとして……)  樹の顔をぱっと見ると真摯な瞳とかち合う。 「結婚指輪……ずっとつけてなくてもいい。でも持っていて欲しい」  僕は胸がいっぱいになりうんうんと何度も頷いた。 「今は……つけてもいい?」 「お願いしまっす」  慌てて両手を差し出してしまったら、くすっと樹が笑みを零した。愛おしくて仕方ないみたいなその笑みにまた顔が熱くなる。樹は左手の薬指にリングを嵌めた。 「俺にもつけてくれる?」  リングの嵌った左手の薬指にうっとり見惚れていたら、樹が痺れを切らしたように言った。見れば左手を出してぷるぷるしている。

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