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(あ、いっくん、ごめんごめんっ)
僕は箱の中に残ったリングをそっと取ると、差しだされた手の薬指に嵌めた。
「俺は一生ナナを愛することを誓う」
「僕も! いっくんを一生愛することを誓います」
お互いの手を絡め合い自然と顔を近づけて誓いの口づけをした。
「いつか本当に結婚式したい、いや、するぞっ」
樹の宣言に僕は「うん」と答えた。
(これだけでも充分幸せだよ)
「それにしても……いっくんずるいずるいっ」
甘々な雰囲気を崩して僕は駄々をこねた。樹はぽかんとしていた。
「何が?」
「だって今日はいっくんのお祝いのはずなのに、僕ばっかり嬉しがらせて」
「ばーか」
ピシッとデコピンされる。
「俺だって嬉しいよ――こうやって俺の為に料理作ってくれてさ、プレゼントも用意してくれて」
テーブルの上にある箱を撫でる。
「指輪も俺の気持ちも受け取って貰えて嬉しくないわけないだろ」
「う、うん」
樹の気持ちは嬉しい。でも何か足りない。
「それに……実を言うと俺はちょっとずるをした」
「え? ずる? なに?」
「赤い薔薇は百八本ない。思ったよりも高かった。申し訳ない」
樹は懺悔するように手を組み合わせて頭 を垂れた。
「あ、そうなの? そんなの全然気にしないよ」
「でも、気持ちは百八本だから!」
「ありがとう、嬉しい。でもまだまだいっくんが僕にくれたものに追いつかないよ」
薔薇の本数が足りなかったとしてもその気持ちが嬉しいわけで、樹が僕にくれた『嬉しい』に見合うものをもっと僕は返したかった。
そう思っていると、うーんと考え込んでいる樹が目に入った。
徐に彼は言った。
「じゃあ、さあ……」
* *
ささやかでも楽しいお祝いの食事を終えた後ほろ酔い気分でのんびり過ごした。それから軽く夕食を終え、そして、今。
僕は樹と一緒に湯船に浸かっている。
(なんでこんなことに〜〜)
樹にもっと何かしてあげたい。そう思っていた僕に彼が言ったのは。
「じゃあ、さあ……今日一緒に風呂入ってくれる?」
「え? そ、それはー」
僕は顔を真っ赤にしてあわあわした。
僕らの関係が幼馴染みから恋人に変わって四年。一緒に暮らして一年。言うのも恥ずかしいけど、やっぱりそれなりに経験は重ねてきた。一緒にお風呂に入ったことだってある。でもこれは本当に恥ずかしすぎて四年の間に片手程だから、僕があわあわしても仕方ない。出来れば避けたい案件だ。
(でも……それでいっくんが喜んでくれるなら……うん、今日は特別!)
「う、うん。わかったよ?」
樹はめちゃくちゃ嬉しそうにガッツポーズをした。
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