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第5話

あっという間に昼休みになった。ここで避けたら良くない気がしたので、意を決してユキを誘う。 「ユキ!昼飯食おうぜ!」 母親の作った弁当を持ってユキの机まで行く。いつもはユキも弁当を用意してるはずなのに、その手には何もなかった。 「あ、ごめん、なんか野木さんと食べることになってるんだけど、コマもくる?」 「え、あ、大丈夫!いってらっしゃい!」 「ごめんね、明日は一緒に食べよ?」 「いいって!気にすんなって!俺のことはいいから行ってこい!」 「うん」 教室を出ていくユキの背中を見ながら、虚しくなる。俺はこれから、こうやって過ごしていくことになるんだなぁ、と。 「な、今日一緒にメシ食ってもいい?」 「お、いいぜ!珍しいじゃん、食おうぜ!」 普段話こそするものの、昼飯はユキとばかり食べていたので、珍しがられながらも別の友人たちと昼飯を食うことにした。 休み時間や教室移動の際に色んな友達と話したりすることはあるものの、昼飯に関してはもっぱらユキと二人だった。 でもいい奴らなので、俺が昼飯を一緒にしてもいいか?と聞くと快諾してくれるような面々である。 「なぁ、お前らが昼飯別々なんて珍しいじゃん?何かあった?喧嘩?」 そのうちの一人が質問してきた、純粋に俺とユキの中を心配しての言葉だった。 「あ、ううん!全然、喧嘩なんてしてない!ただ……」 「ただ?」 思わず言い淀む。これは俺の口から言ってもいいものなのだろうか?でも俺が黙っていたとしても噂はきっと広がるだろう、それにユキに口止めされてる訳じゃないしな、と思い言ってしまった。 「ユキに恋人が出来ただけ」 「えぇ!?」 友人たちは揃って大きな声で驚いた。それもそうだ。 「誰と!?あの狛井以外には懐かないで有名な松永が!?」 みんなのイメージは俺にしか懐かない無口なクール男、なので当然の驚きである。 心底信じられないというような表情をしていた。 「お前、松永に捨てられちまったんだな、可哀想に」 「あ、はは、」 これから一緒に飯食ってやるから元気出せよ!と言われて、冗談とわかっていても心に刺さった。 いや、冗談だからこそ余計に刺さったのかもしれない。俺はユキに、捨てられたのか。 そして、松永雪弥に野木彩子という恋人ができたという噂はあっという間に校内中に広まった。 それもそのはず、ユキは俺以外に懐かないで有名だし、それに加えて美男美女カップルとして有名になってしまった。 昼休みに話した内容だったのに、放課後になる頃には学校中を駆け巡る噂となっていた。HRが終わりちらほらと周りからも噂の声がした。 流石に申し訳なくなり、帰りの支度をしているユキに声をかける。 「ユキ、ごめん」 「いいよ、別に隠そうと思ってたわけじゃないし、コマも嫌がらせで言ったわけじゃないでしょ?」 「うん、でもこんなに広まると思わなくて……」 「いいよ、気にしてないから。でも驚いたな、そんなに噂になるなんて」 ユキは本当に気にしていないようだった。それよりも噂の広がり方に驚いているようだった。 「そりゃなるだろ!美、美男美女カップルだもん……!」 「容姿とか、そんなに大事なのかな……」 「え?」 「なんでもない、それじゃ、後でコマの部屋に行くから待ってて」 「う、うん!」 容姿について触れられたとき、ユキは冷たそうな顔をしていた。その表情を見たらそれ以上言及できなかった。 ユキは一体、何を考えているのだろうか。今の俺にはユキの考えていることが全然わからなくなっていた。 近くにいるはずなのに遠い、ってのはこういうことなのかもしれない。

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