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第10話

宣言通り、ユキは昼飯を作ってきた。今日は天気も良かったので、二人で中庭で食べることにした。木の影になっているベンチに座り、ユキがお弁当を広げる。 色とりどりのおかずに、栄養バランスも考えられたメニュー。朝からユキが俺のためにこれを用意してくれたのかと思うと心が躍った。 他の誰でもない、俺だけのために用意してくれたのだ。ダメだ、鎮まれ。勘違いするんじゃない。 「はい、食べて」 「さんきゅ、でもここまでしてくんなくてもいいのに……」 本当は嬉しくてたまらないのに、思わず可愛げのないことを言ってしまう。 「俺がコマのためにしたいからしてるだけだって」 「俺は別に恋人でもないし、お前恋人いるんだから……」 「俺の意思でしてるんだから、そこまで否定しないでよ」 「う、ごめん」 「俺こそ、ごめんね」 ユキがしたくて俺のためにしてくれているのだ、俺はそれを甘んじて受け入れよう。だって別に、ユキからされることで嫌なことなんてないんだから。 「さ、早く食べよ。コマの好物たくさん入れたからさ」 「お、おう!いただきます!」 好物のたまご焼きから食べる。砂糖が入った甘いたまご焼きだ。ユキの家は出汁派だったから、俺のためにこの甘いたまご焼きを作ってくれたのかと思うと純粋に嬉しい。 「たまご焼き、うまい」 「コマ、甘いの好きだもんね、よかった」 俺が食べる様子を見てニコニコとしているユキは可愛かった。そんなに見られてたら食いづらい、と俺が言えば、ごめんと謝りながらもあまり悪びれる様子もないユキに、幸せな時間を感じていた。 久々になんの邪魔も入ることなく、純粋にユキとの二人の時間を楽しめた気がした。 ユキの弁当でお腹も心も満たされて、そんな状態で午後の授業に集中できるわけなどなく、授業を聞いているような聞いていないような状態で過ごし、あっという間に放課後になった。 ユキの過保護は今日までなので、今日は大人しく送られてやろう、と思い、荷物を準備しユキの元へと向かった。 「ユキ、帰ろうぜ。今日は過保護だから一緒に帰るんだろ?」 「うん!」 ふざけながらそう言うと、ユキは微笑みながらいい返事をしてきた。俺と帰れるのがそんなに嬉しいのか、なんて思いながら。 「雪弥くん!」 ユキと帰る準備をしていたら、また誰かに呼び止められる。デジャブだ。この声、顔を見なくてもわかる、野木さんだろう。 そう思いながらも声の主を確認するとビンゴ、ユキのことを呼んだのは野木さんだった。 「何?」 お前は本当に彼女と付き合っているのか?と恋人に向けるべきではない表情と低い声でユキは返事をした。どうしてそんな態度を取るのか不思議でならないんだが、本当に付き合ってるんだよな……? 「えっと、今日は、一緒に帰れないかなって思って」 ユキの冷たい態度に少し怯えながらも野木さんはユキのことを誘った。ああ、またこの流れか、わかったよ、俺が空気を読めばいいんだろうよ。 「今日はコマと帰るから無理」 「そっか……」 こらこらこらこら、ユキには野木さんのこの泣きそうな表情が見えていないのだろうか?意を決して誘ってるのにその態度はダメだろう、ユキ。別に俺が空気を読まなくてもいいんだろうけど、ここでユキと一緒に帰るのは何か違う気がした。 「あ、いや!俺用事思い出したから二人で帰りなよ!」 「ちょっと、コマ!」 「じゃ、またな!」 俺を引き止めようとするユキを無視して逃げるように俺は一人帰宅した。 でもなんで、ユキが恋人である野木さんにあんなに冷たくするのか俺にはわからなかった。でも、俺が恋人だったらユキは優しくしてくれんのかな。 俺だったら、俺が、俺とーー……。

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