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第6話 家庭環境

 颯太と一緒に精神科の病棟を訪ねた。 部屋のドアを開けると、すっと青年が立ってこちらを見て会釈した。 「君が藤沢碧人君ですか?」俺は声を掛けた。 「はい、そうです。この度は大変お世話になっています」 颯太がそっと青年のそばに行き、手を取った。 「良く俺を訪ねてくれましたね。ありがとう。 俺に出来ることなら、なんでも助けるよ。安心して」 そう言って手をぎゅっと握っていた。 すると彼は崩れるように泣きじゃくった。 おれは颯太と顔を見合わせた。 少し頬笑みながら、彼が収まるのを待っていた。 「藤沢君、俺はこの病院の院長の立花です。 もう大丈夫だよ、安心して。 陽菜ちゃんもちゃんと守るからね。 落ち着いたら、少し大事なことを話そうか?」 泣きながらも頷いていた。 まだしゃくりを上げていたが、颯太がハンカチを出して渡していた。 「陽菜ちゃんは苦痛を和らげるために、 点滴に眠り薬が入ってるんだよ。 だから明日の朝までは目を覚まさないから大丈夫だよ。 ちょっと他の部屋で話そうか?」 院長室に移動してソファに座ってもらった。 俺はコーヒーを淹れた。 「良かったら温かいコーヒーでも飲んでね」 「ありがとうございます。頂戴します」 少し震える手でカップを取って、少しずつ飲んでいた。 喉が渇いていたんだね。 俺はパソコンを開いた。 「まず基本的なことを教えてね。 藤沢君は今は何をしているの?」と俺。 「俺は教師になろうと思っていて、 専門の大学に入学していて今は1年です。 でも事情があって休学しています。 親には内緒なんだけど、日中も夜も飲食店でバイトをしています。 ですが、昨日は陽菜のことを知ったから、 バイト先には俺が腹痛と高熱でしばらく休むと伝えています」と藤沢君。 「なんで休学してまで昼夜を働いているの? 聞いてもいいのかな?」と俺。 「はい、俺は幼馴染の陽菜が心配で、 親に時々暴力を振るわれているらしいと分かって、 それで逃げる場所を用意してやりたかったんです。 そのためのアパート代を稼ごうと思って、休学してバイトをしています」 はあ‥‥‥、颯太と顔を見合わせて溜息をついた。 「碧人君って呼んでもいい?」と颯太。 「はい、いいです」 「君は本当にやさしくて素敵な人ですね。俺、感心しちゃった」と颯太。 少し彼の頬が緩んだ。 「うん、本当にそうだね。 陽菜ちゃんはどんな家庭環境なの?」と俺。 「あのう、駅に近い路地に古いバーがあって、 そこは陽菜の両親がやっているバーなんです。 でも養父が乱暴な人で高校生なのに、 毎晩バーに出て客の相手をしろって言うらしいんです。 おまけに母親まで皿洗いでもしろって言われて、 嫌がると暴力を振るわれるので、逃がられないって言ってました。 それで最近は高校にも行ってないらしいと近所の同級生から聞いて、 心配になってメールしたんです。 そしたら、俺んちの物置に居るって言うんですよ。 そこは陽菜の逃げ場所になるようにと、前に教えておいた場所なんです。 で、家の物置を覗いた時には、ほとんど倒れているような状態でした」 悲しげに語る碧人君。 「それは本当にひどい話だねえ。 未成年をそんなところに働かせるなんて違法だよ」と俺 まあ、俺が怒ってもしょうがないんだけどさ。

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