11 / 19
第11話 家政婦・由紀さん
その日の17時ごろ、碧人君が帰ってきた。
「ただいま戻りました」
碧人君が律義に院長室に寄ってくれた。
「ああ、お帰り。ちょっと陽菜ちゃんのことで、
話があるんだけど時間は良いかな?」
「はい、大丈夫です」
ソファに座ってもらって、コーヒーを淹れた。
「今日は弁護士の山川先生と児童相談所の加藤さんに、
来てもらって話し合った結果なんだけどね。
プリントしておいたから渡すね」
「はい、陽菜の為にありがとうございます」
「いや、いいんだよ。これも仕事の1つだからね」
*プリント*
1・診断書・全身打撲・骨折で全治5か月
暴力による精神的なストレスで3年~5年の治療と経過観察
2・退院後はゆおん(立花颯太)の生家に二人共住む。
3・陽菜さんは緊急保護扱いで、生活保護を受けます。
入院中は2週間以内に月に1万円の小遣い。
退院後は初月から月に6万の生活費を支給。
4・医療費は即日全額無料
5・高校の退学手続きを代理として、山川弁護士がします。
そして通信制の高校への転校をします。
6・颯太の生家には、家政婦さんが4人、執事と、運転手が1名。
家の玄関の前には常に警備の人がいるので安全です。
プリントに目を通していた碧人君、
「なんか、ゆおんさんのおうちって凄いんですね?」と碧人君。
「そうだね。凄く広いよ。セキュリティも万全だから安心できるよ。
それとね、そろそろ筆頭家政婦の由紀さんが来ると思うんだけどね。
ほら、陽菜ちゃんが着の身着のままで来ただろう?
だから着替えや肌着に日用品を用意したいって、
言ってくれてるから、お願いすると良いよ。
碧人君も陽菜ちゃんも颯太のゲストだからね。
何も心配しないで住んでね。
ただね、俺と颯太は俺の実家の青山に住んでいるんだよ」
「あっ、そうなんですね」
そこへ受付から連絡があった。
由紀さんが受付けに来てくれたらしい。
「由紀さんが来てくれたらしいから、迎えに行こうか?」
「はい」
受付で由紀さんに碧人君を紹介した。
「藤沢碧人です、どうぞよろしくお願いします」
すごく緊張しているようだ。
「立花家の筆頭家政婦の間宮由紀と申します。
どうぞよろしくお願いします」
「由紀さん、では病室に行きましょうか?」
病室に入ると、やはり陽菜さんは眠っていた。
でも薬はそろそろ切れていると思う。
「碧人君、陽菜ちゃんに声を掛けてみて。
もしかしたら目を開けるとかもしれないよ」
彼がそっと顔のそばで声を掛けた。
「陽菜、陽菜、起きてるか?目を開けて」
そしてゆっくりと陽菜ちゃんが目を開けた。
しばらく天井を見ていたが、ゆっくりと碧人君の方を見つめた。
「陽菜、大丈夫か?ここは病院だよ。陽菜は助かったんだよ」
うんと少しだけ頷いた。
「陽菜さん。俺はこの病院の院長で立花です。陽菜さんの主治医です。
今はつらいと思うけど、肋骨を2本骨折しているから、しばらく動けません。
しばらく碧人君が、ここで一緒に夜をここで過ごしてくれますからね。
安心してください」
また少し頷いた。言葉はまだ発してないが、
こちらの話は理解できるようだ。
「あのね。陽菜。もう家に帰らなくていいんだよ。
治ったら、ゆおんさんの生家で預かってくれることになったんだ。
俺も陽菜も一緒だよ。だから安心して。
そして今日は生家の筆頭家政婦の間宮由紀さんが、
見舞いに来てくれたんだよ」と碧人君。
視線が由紀さんに向かった。
「陽菜さん。私は由紀です。
これからずっとお世話にしますからね。
どうぞ安心してください」
また少し頷いた。
「今日は陽菜さんの必要なものを、
揃えようと思って伺いました」と由紀さん。
「はい、本当に有難うございます。
さっき少しは買って来たのですが、
肌着まで分からなくて買えませんでした。
お世話になってもいいでしょうか?」と碧人君。
「はい、大丈夫です。どうぞお任せください。
では今あるものを教えてください」
由紀さんは荷物を見ながら、メモをしていた。
碧人君はタオルやティッシュ、コップなどを買って来ていた。
「はい、分かりました。
では明日、日中になりますが揃えてお持ちしますね。
お代は要りませんよ。颯太様のゲストですからね」
「え、いいんでしょうか?」と碧人君。
さすがに驚いたようだ。
「碧人君、心配しなくていいよ。由紀さんに任せて」
俺も言葉を添えた。
「はい。ではどうぞよろしくお願いします」
碧人君が深々と頭を下げた。
ともだちにシェアしよう!

