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第12話 碧人サイド・陽菜の涙
由紀さんと院長先生が帰られた。
陽菜の着替えや下着を揃えてくださるとのこと。
しかもお金は要らないなんて......、
何のつながりもない、関係もない俺達なのに。
申し訳なさすぎる。
どう返せばいいんだろう?
恩返しする方法も分からない。
陽菜はまた眠った。
ボンヤリする程度の痛み止めの薬は、使っているとのことだった。
陽菜の髪をそっと撫でた。
そして手を握っていた。
「陽菜、早く治れよ」と小さく声をかけた。
ん?
なぜか少し頷いた気がした。
「陽菜、起きてるの?」
また声をかけるとうっすらと目を開けた。
「つらいか?痛むの?」
少し首を横に振った。
「俺がずっとそばにいるからね、安心して眠っていいよ。
日中は大学に行ってるけど、終わったらすぐ帰ってくるからね」
陽菜はまた目を閉じた。
でも目尻から涙がすーっと流れて来た。
「陽菜、もう泣かなくてもいいんだよ。
これからはずーっと平和な毎日が待ってるよ。
俺もそばにいるからね」
少し頷いた。
タオルで拭いてやった。
握った手の甲に静かにキスをした。
あんまり動かすと痛いかもしれない。
「顔を拭いてあげるね」
部屋の洗面台でお湯を出してタオルを絞った。
陽菜の顔や首をそっと温かいタオルで拭いてやった。
そして腫れた手もそっと拭く。
「陽菜、水を飲むか?」
頷いた。
ベッドのリモコンを操作して、上半身を少し起こした。
首元にタオルを当てて、吸い飲みで飲ませてやる。
陽菜は少しずつ飲んでいた。
これが生きてるってことだな。
これだけでうれしい。
「陽菜、お腹空いた?なんか食べる?
ゼリーを買ってきたんだよ。
陽菜の好きなブドウゼリーだよ。食べる?」
俺を少し見つめて頷いた。
「そうか!食べれるんだね?」
冷蔵庫から出して、マスカットのゼリーを少しずつ口に運んでやった。
ゆっくりと一口ずつ飲み込んでいる。
これは前に陽菜が、すごく美味しいって感激したゼリーだ。
ちょっと高いけど、ゼリー自体も大きい。
5口くらい食べたところで、少し首を振った。
「じゃあ、今度はお水を飲もうね」
吸い飲みで少しずつ飲ませた。
「そうだ、高校はね、
弁護士さんにお願いして退学にしてもらったんだよ。
つかまると危ないからさ。
その代わりに通信教育の高校に、入学の手続きをしてくれるんだって。
今度からはゆっくり自分のペースで勉強をすれば、
ちゃんと高卒の資格が取れるって言ってくれたよ。
それにね。学費は全部福祉で払ってくれるから、無料なんだって。
良かったね!」
陽菜が俺をじっと見つめていた。
「なあに?何か言いたいの?」
少し首を振ってまた目を閉じた。
「あと5分したらベッドを平らにしてあげるね」
「陽菜、お休み」
瞼にキスをした。
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