14 / 19

第14話 由紀サイド・スーツケース

 山のような荷物。 これをこのまま病室に持ち込むわけには行かない。 地下でパンを買って、急いで帰宅した。 みんなでコーヒーとパンの食事を済ませたら、 今日の買い物の店開きだ。 「そういえばスーツケースがないよね?」と真知子ちゃん。 「ああ、そうねえ、それ忘れてた」とマツさん。 「良いわよ。行く時だけ私のを使って、 明日はちゃんとしたのを買いましょうよ」と私。 「賛成!」 それからみんなで値札やタグを外して畳んだ。 すべて終わると、結構いっぱいになった。 「ねえ。これ全部は病室の引き出しに入らないから、 今いるものを先に持って行った方がいいよね? で、まだ入るなら、翌日持って行くことにしましょうよ」と私。 「そうねえ、そうするしかないわね。 だってまだ寝たきりなんでしょう?」と良子ちゃん。 「そうなのよ。肋骨を2本骨折しているから、 寝返りもできないのよねえ」と私。 「本当にかわいそうだねえ......」と真知子ちゃん。 「あーー!」と私。 「なに??」と声が揃った。 「靴下よ!ないじゃない?ハンカチもさ」 「ああ~そうだ。結構忘れるね。また買いに行きましょうよ」 「それにさ。財布や携帯だってないんじゃないの? 聞いてみたら?なかったらかわいそうだもん」と良子ちゃん。 「うん、今日行ったら見て来るわね」 忘れものだらけだった。メモした。 用意が出来たので小林さんと病院に向かった。 病室に入ると、陽菜ちゃんは目を覚ましていた。 「こんにちは、陽菜ちゃん。由紀です。具合はどうですか?」 声をかけると、少し頷いた。 そうか、まだ声が出せないのね。 「今日はね。必要なものを沢山用意したの。 全部陽菜ちゃんの物よ。 家政婦全員で選んだんだけど、気に入ってもらえるかな?」と私。 小林さんが、 「これは颯太さんからのプレゼントだから、お金は要らないんですよ。 だから遠慮しないで使ってね」と声をかけた。 そして私は、スーツケースから出しては、 「ほら見て?かわいいでしょう?似合うと思うわよ」 と1枚ずつ陽菜ちゃんに見せてから、引き出しに仕舞った。 タオルが少しはみ出したから、枕元のワゴンの下に入れた。 「最初に着ていた洋服はお洗濯するから持って帰るわね」 少し頷いた。 スリッパも見せて足元に置いた。 マグやポットはワゴンの上に。 白い整理かごには、基礎化粧品や鏡やくしを入れた。 「あのね。靴下を買うのを忘れたから、明日買って来るわね」 少し陽菜ちゃんが微笑んでうなずいた。 「お水を飲む?」 頷いた。 少しベッドを起こしてから、タオルを当てて吸い飲みで飲ませた。 「何か食べる?」 ううんと少しだけ首を振った。 私は飲むヨーグルトを買っていた。 「これは好き?」と聞くと頷いた。 「じゃあ、冷蔵庫に入れておくわね、碧人君に飲ませて貰うといいわ」 「ではそろそろ行きましょうか?」と小林さん。 「ではまた明日来るわね」 陽菜ちゃんが少し頬笑んだ。 受け入れてくれたかなあ? いきなりだったから、驚いたかもしれない。

ともだちにシェアしよう!