15 / 19
第15話 碧人サイド・通信制高校
夕方、ようやく大学が終わって陽菜の病室に行った。
しばらく大学を休んでいたので、その分を取り戻すのが大変になっている。
しょうがない。終わりよければすべてよし。
もう陽菜が脅かされる心配がないんだから、ありがたいことだ。
バイトは土日だけでも入れた方が、今後のためにもいいんだけど、
立花先生が辞めるように言ってくれたから、しばらく様子を見ようと思う。
病室に入ると、陽菜が目を開けて微笑んだ。
「ただいま、帰ってきたよ。今日はどうなの?」
ニコッと笑うと、見て見て!とばかりに引き出しを指さした。
「うん? 引き出し?」
うんうんと頷く。
引き出しを開けると、色とりどりのかわいい服や肌着がいっぱい入っていた。
「ええ? なあに、これ?」
俺が驚くと、陽菜がメモに “小林さんと由紀さんが持って来てくれた” と書いた。
「だってこれ全部高いでしょう?」
ううんと首を振る。
「これは颯太さんからなの?」
うんと頷いた。
「へえ~すごいんだねえ。まるで魔法使いだよ。女の子の趣味なんて分からないもんね」
またメモに書いた。
“家政婦さん達が選んでくれたらしい” だって。
「へえ~そうなんだ、すごいねえ~。良かったね、陽菜」
喜ぶ陽菜の髪を撫でた。
「髪をくしで梳いてあげるよ」
ベッドの上半身を少し上げた。
陽菜の髪はセミロングだ。
柔らかい髪をそっとくしで梳くと、陽菜が目をつぶった。
頬の赤いあざが少し治ってきている気がする。
そこへドアがノックされた。
ドアが開くと、立花先生と颯太さんが入ってきた。
「こんにちは」とあいさつをした。
「大学が終わったんだね。休んでいた分を取り返すのは大変じゃない?」
先生が心配してくれていた。
「いえ、それは大丈夫です。うちは座学よりも現場で実習する方が多いんです」
「へえ、そうなんだ。現場重視の学校なんだね」と立花先生。
颯太さんが陽菜のそばに行って声をかけた。
「陽菜ちゃん、具合はどうですか?」と颯太さん。
はにかむように、陽菜が頷いた。
「陽菜ちゃん、少し声が出るかな? あーと声を出してみて」と先生。
陽菜は口を開けて、数回はーと息を出すんだけど、声になっていなかった。
「うん、わかった。もういいよ。そのうち話せるようになるから、無理しなくていいよ」
立花先生が陽菜に温かい言葉をかけてくれた。
「もっと身体が治って力がついてくれば話せると思うから、焦らなくていいよ。
それとね、通信の学校の手続きができたんだよ。
これが資料だから読んでみてね。オンラインで授業を受けられるからタブレットも持ってきたよ」
先生と颯太さんが、資料やタブレットを入れた紙袋をくれた。
「え? タブレットまで頂いてもいいんですか?」
恐縮して颯太さんに尋ねた。
「うん。良いよ。気にしないで。少しずつ勉強が出来るといいね」と颯太さん。
「本当に有難うございます。何もかもお世話になりっぱなしで、本当にうれしいです。
それに陽菜に可愛い洋服までいっぱい頂いて、本人もすごく喜んでいるみたいです」
陽菜の顔を見るとうれしそうに、うんうんと頷いていた。
「うん、いいよ。なんかね、家政婦さん達が夢中になって洋服を選んで、すごく楽しかったらしいよ」と颯太さん。
「目に浮かぶな」と先生がくすくす笑っていた。
ともだちにシェアしよう!

