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第16話 碧人サイド・最後の夜

 陽菜が入院してから今日で7日目だ。 最初の一週間は陽菜の病室で寝泊まりしてもいいよと許可してくれたんだけど、あっという間に一週間が過ぎてしまった。 このことを陽菜は知らない。 どう伝えようか? 陽菜はずっと痛みを抑えるための薬と睡眠薬で眠っていた。 目を開けて俺を見るようになったのは4日ほど過ぎてからだった。 大学が終わって電車を乗り継ぎ、青山で降りて病院へ行く。 せっかく慣れたんだけど、 明日から颯太さんの生家でお世話になることになっている。 ドアをノックして部屋に入ると、陽菜が少し頬笑んで俺を見つめる。 「ただいま。今帰ってきたよ」 声をかけても、頷くだけで声はまだ出ない。 「陽菜、今日の調子はどう?」 う~ん……という感じで、少し頭をかしげてから頷く。 つまり、それほど変わらないということなんだな。 「あのね。大事な話があるんだよ」 急に陽菜の表情が曇った。 陽菜の手を両手で握って目を見つめる。 「今、病室で俺も一緒に泊まらせてもらってるんだけど、最初の1週間だけという約束だったんだよ。 だから明日からは、病室には顔を出すけど、寝る時は颯太さんの生家でお世話になることになってるんだ。 陽菜も退院したら颯太さんの生家に来ることになっているんだよ。わかる?」 うんと頷いた。 「俺が実家に帰ると陽菜のお義父さんに見つかるかもしれないからさ。それで颯太さんちに住んだ方が安全だからって言ってくれたんだよ。 でも毎日会いに来るからね。 身体を治したらまた一緒に居られるからさ。それまで辛抱だよ」 陽菜の大きな瞳が見る見る間に潤んで、涙がこぼれた。 ぎゅっと握った手を離し、そっと身体を起こして抱きしめた。 「あまり身体を起こすと胸が痛いよね? ごめんね。 胸の痛みが取れるまでは、まだしばらくかかるね」 陽菜は声が出ないのに、嗚咽で胸が震えていた。 「もう泣かなくていいよ。毎日会いに来るから、 夜は早く寝てね。メールは毎日するからさ」 うんと頷いて、メモに何か書いていた。 “あーちゃんの匂いのする服を置いて行って” 「うん、わかった。俺のTシャツを置いて行くよ。それでいい?」 “ダメ、もっと欲しい” 「俺の靴下は臭いぞ」 陽菜もふと笑った。 「じゃあ、俺のタンクトップでもいい? パンツはダメだぞ」 また頬がゆるんだ。 それでTシャツとタンクトップを脱いで、畳んで陽菜に渡した。 「これでいいの?」 うんと頷いた。 俺は他の服を着た。 「明日颯太さんちに行ったら、写真をいっぱい撮って送るね」 手を握ると、その手を陽菜が自分の頬に寄せた。 俺は陽菜の頬を両手で挟んで、そっと唇にキスをした。 「今夜は眠るまでそばにいるからね。もう眠っていいよ」 そう言うと、安心したように目を閉じた。

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