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第18話 ひなどり
緊張して固まっていた碧人君を置いて、青山の実家に帰ってきた。
「先生、碧人君は大丈夫だったかなあ?」と颯太。
颯太が少し不安そうな表情をした。
「うん、大丈夫。すぐ慣れるよ。だから心配しなくていい」
「先生、俺お風呂に入りたい」
颯太が身体を寄せて甘えてきた。
「いいよ、一緒に入ろう」
颯太の潤んだ瞳に見つめられると、つい何でも叶えてあげたくなる。
もう一緒に風呂に入るのが習慣になったらしいから、最後まで面倒を見ないといけない。
湯を溜めながら椅子に座らせて、先に颯太の髪や身体を洗ってやる。
目をつぶったままのかわいい颯太。
「今日はどんな日だったの?」
今日は颯太とあまり話が出来なかったから聞きたかった。
「う~んとね。なんか子供が出来たような感じかな?」
「いつできたの?」ちょっと面白い……。
「だって碧人君や陽菜ちゃんの面倒を見てあげないといけないから、子供と一緒でしょう?」
「うん、そうだね。親鳥は颯太だよ」
「でも先生もひな鳥のパパになってね」
「ふ、そうか、俺もパパになったんだ……」
ニヤニヤしている颯太。
「颯太も早く大学を卒業しないといけないね」
「うん、大学を出る前に赤ちゃんが欲しいなあ」
「え? 大きなおなかで大学に行くの?」
___まさか。
「ううん、卒業まであと3か月になったら作るの」
前から卒業したらすぐ子供が欲しいと言っていた。
俺も子供はうれしいけど、
まだ颯太が子供のような気がしてピンとこない。
子供が子供を育てて大丈夫か?そんな気持ちだ。
「う~ん、タイミングが合えば良いけどね」
「先生次第だからね」
くるりと回って俺の首筋に両手を回して抱きついてきた。
思いっきり抱きしめる。
「じゃあ、二人で作ろうね」
その夜は母鳥の言うままに予行演習をした。
ベッドに入るとすぐ胸に顔を埋めるから、朝までずっとそのままになる。
颯太は身体が弱いから妊娠すると、様々なトラブルが予想できる。
それで俺も少し気が重くなる。
正直どうやって乗り切ろうか……と思う。
本人に分かるわけもないんだけど、だからと言って起きてもいないことを教える必要もない。
結局は生家の頼もしい由紀さん達に頼って、おんぶに抱っこになるかもしれない。
翌朝、夕べは一人で過ごした陽菜ちゃんが、ちょっと気にかかっていて病室を覗いた。
「お早う。夕べは眠れたかな? ちょっと心配していたよ」
呼びかけに少し頷いたものの、
やはり目を伏せたまま表情が晴れない。
まだ入院して1週間だから寂しいよね。
何かいい方法はないかな?
そうだ、タブレットだ!
「陽菜ちゃん、タブレットは覗いてみた?」
ううんと顔を横に振った。
「通信の学校の生徒たちのチャットがあるんだよ。皆、離れ離れの場所にいて頑張っているから、皆に“これから始めます”って挨拶をしたらどうかな?」
そして画面を出して、やり方を教えた。
最初の投稿を手伝った。
「陽菜ちゃんの名前はどうする?好きな名前を付けていいんだよ」
え~? と少し頬がゆるんだ。
しばらく考えていた。
そして画面に自分のニックネームを登録した。
“ひなどり”
あれ? これは昨日、颯太と話していたばかりなのに?
「じゃあね。良い名前ができたから、何か書き込んでみて」
すると、
“初めまして、ひなどりです。新入生です。どうぞよろしくお願いします”
陽菜ちゃんが書き込むと、1分もしないうちに返事が来た!
俺の目を見て、陽菜ちゃんがニコッと笑った。
“初めまして、ひなどりちゃん。私も同級生のみっちゃんです。よろしくね!”
「あ、すごいねえ。返事が早いなあ~」と俺が驚いた。
それからは、次から次に返信が届いていた。
陽菜ちゃんが笑顔になった。
「じゃあ、皆に色々教えてもらうといいよ」
“うん”と頷いていた。
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