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第19話 碧人サイド・お弁当の重さ

立花院長と颯太さんは青山の実家に帰って行った。 筆頭家政婦の由紀さんが、 「お風呂の用意が出来ていますから、どうぞお入りください」と場所を教えてくれた。 そして「洗濯物はここのかごに入れてください。洗濯をしておきます」と言ってくれたが、恐れ多くて “自分でするので大丈夫です” とご辞退した。 ああ……こんなとてつもなく大きなお屋敷で、沢山の家政婦さんや執事までいる生活なんて慣れるはずもない。 立花先生に言われた通り、あまりに大きなお風呂に驚いた。 お風呂屋さんか? と思った。一度に10人は入れる。 あれだとお風呂を溜めるだけで1時間以上はかかりそうだ。 俺はシャワーだけでもいいのに申し訳ない。 ホテルのように整えられた個室。 良すぎてどうしていいか分からない。 どうお返しをすればいいのだろうか? 今頃、陽菜は病室で泣いているのではないかと心配になった。 メールを書いた。 お屋敷の様子や大きなお風呂に入ったこと。 それに夕飯にカツカレーを出してくれたこと。 俺の部屋の隣には陽菜の部屋が用意されていること。 個室の部屋を写真に撮って、ラインで陽菜に送った。 すぐ返事が来た。 驚いた絵文字が三つくらい続けて来た! 少し笑った。 “驚いたよね? 個室が凄いだろう? 隣が陽菜の部屋だよ” ばんざーいの絵文字が来た。 その日は勉強するまで気が回らなかった。 今夜は全滅だ。とにかく早く寝ようと思った。 ベッドが気持ち良すぎた。 なんて上質なベッドなんだろう……。 俺の為にこんなにしてもらって良いのかな? 実家のベッドは薄いマットレスがあるだけの パイプのベッドなのに、何もかも違い過ぎる。 翌朝も、起きるともう朝食の準備が出来ていた。 うわ~こんな致せり尽くせりで、まるでどこかのお坊ちゃまだな。 「お早うございます。朝早くから食事をありがとうございます」 「いいんですよ。朝は和食が良いですか?洋食が良いですか?」と由紀さん。 「あ、俺はどちらでもありがたく頂戴します」 執事の小林さんもテーブルについていた。 「まだ緊張していますか? いつもは朝はどうしているんですか?」と小林さん。 「はい、いつもは俺が準備しています。大体は食パンを買って卵を焼いたり、サラダを作ったりしています」 「ほう~、それは感心ですね」 テーブルには洋食が出されていた。 まるでホテルだよ。 それでも実習をするとお腹が空くので、目一杯食べた。 そして出がけに、 「これ持って行ってお昼に食べてね」と由紀さんに包みを渡された。 「え?」 「お弁当を作ったのよ。良かったら食べてね」 笑顔でお弁当を渡されて、深くお辞儀をした。 「ありがとうございます。喜んで頂戴します」 そして大学へ向かった。 今までより少し遠くなったが、それでもありがたい。 お弁当の重さがうれしい。 バイトで貯めたお金が少しはあるから、しばらくは交通費の心配もない。 充実した暮らしってこういうことなんだなと思った。

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