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第21話 広報からの相談
今日は病院を父に頼んで、朝からミツワに出社した。
颯太も一緒だ。なんか広報から用事があるらしい。
「一体何の用なのかなあ?」といぶかしげな颯太。
10時、広報の面々が会長室にやってきた。
「お早うございます、わざわざすみません。実はご相談があります」と広報スタッフ。
「はい、どうぞ」
山下「これは依頼というか、ヘルプというか……、ちょっと判断できないメールが届いたんです。見ていただけますか?」
「いいですよ」
颯太と二人でメールのプリントを読んだ。
「初めまして、吉沢達也と申します。19歳です。実はご相談があります。歌手になりたいのですが、なかなかうまくいかず、生活も出来ないのでバイトで繋いでいるのですが、オメガなのでヒートになるたびにクビになってしまいます。
そこで思い切って最後にご相談をしてみようと思いました。なんとか歌手として形になるでしょうか? 判断していただければと音源を送ります。どうぞよろしくお願いします」
「ふ~ん、そうなんだ。ヒートになるたびにバイトをクビになるんじゃ、生きていけないよね?」と颯太。
「そうだね。これじゃあ、きりがないよね。ところで音源を聞かせていただけますか?」
スタッフがパソコンで音源を流した。
澄んだ声で美しい。でも颯太とはまた種類が違うのかな?
2曲入っていて、もう1曲は速い曲で、声にパンチがあるのかな?
俺には詳しくわからないけど。
「どうでしょうか?」と広報スタッフが聞いてきた。
颯太をつついた。
「え? 俺?」と颯太。
でも首をひねっていて、よく分からないらしい。
「颯太が分からなかったら困るよ」俺がぼやいた。
スタッフたちに、「皆さんはどう思うんですか?」と逆に聞いた。
皆、お互いに顔を見合わせていたが、
「一人ずつ意見を聞かせてもらえますか?」と俺。
山下「声は良いと思います。ただ、これからプロに磨いてもらえば光るような気がします。地声がきれいなので」
小松「私も声はきれいでいいと思います。鍛え方で良くなると思います。まだ未知数ですね」
岡本「例えば研修生のような制度があれば、十分に可能性があると思います。
最悪独り立ちが出来なかったとしても、バックコーラスや他に生かす道はあると思います。
少なくとも素人とはレベルが違うと思います」
石井「思い切って研修生制度を作ったらどうでしょうか?
彼の声はすごくきれいなので、何かしら生かす道はあると思います」
田代「歌だけではなく、まだ若いのでダンスもみっちりやれば、颯太さんのコンサートにも一緒に出演できるようになると思います。今のままでは勿体ないなあと思います。
このままでは確実につぶれてしまうのは、目に見えていますよね?」
「颯太、皆さんが研修制度を作って面倒を見てあげましょうと言ってるよ。どうするの?」と俺。
「う~ん、どうしよう……。
俺は他の人をどうすればいいのかまでは分からないんだよね。
面倒を見るのは構わないんだけど、どうやって生かしてやっていいのか?のノウハウがないんだもん」と颯太。
「ねえ、颯太、いい考えがある。隣のNatsuさんに意見を求めてみたら?
向こうはトレーナーも多いし、ダンスグループもいるし、なんでも揃ってるだろう?
修業に出してもいいしさ。
うちで一からやるよりも、夏さんに頼んだ方がはるかにいいと思うよ」と俺。
「ああ、そうだね。一度この人にミツワに来てもらおうか? そして夏さんに会ってもらって、見てもらおうかなあ?」と颯太。
「うん、じゃあ、電話してみるよ」
すぐその場でNatsuさんに電話した。
「はい、浅田です」
「お久しぶりです、ミツワの立花です。お元気ですか?」
「はい、元気ですよ。どうかなさったんですか?」
「実は颯太を頼って歌手になりたいと言う子がいまして、
声がきれいなのでプロとしてやっていけるかどうか、見ていただけたらと思いまして」
「へえ~そうなんですか。良いですよ。では明日の夕方5時でもいいですか?
こちらはトレーナーを呼んでおきますので、場所は浅田タワーのきらら小ホールに来ていただけますか?」
「はい、分かりました。伺います。ありがとうございました」
ふうう……。
「どうだったんですか?」と広報スタッフは息を飲んでいた。
「あのね。Natsuさんがトレーナーを呼んで、明日の5時にきらら小ホールで歌を聞きますって」
「ええ~良かった!」
皆で喜んで拍手した。とりあえず一件落着。
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