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第22話 吉沢君の面接

「ちょっとその子を今ここに呼べるかな? まだ1回も会ってないからさ」 「はい、分かりました。すぐ電話します!」 山下さんがさーっと部屋を出て行った。 そして戻ってきた。 「あのう、10分以内に来るそうです」と山下さん。 「え? 早すぎない?」笑った。 「連絡が来るのをずっと待っていて、すぐ行けるように赤坂のカラオケで待機していたんだそうです」 「ほう~、それは凄いね。じゃあ、かわいそうなことをしたね。待たせちゃってさ」と俺。 「うん、そうだね。かわいそうなことをしたよ。本当に必死なんだね」と颯太。 そして待つこと10分。 山下さんが下まで迎えに行ってくれて、吉沢達也君がミツワの会長室に来てくれた。 現れた彼はオメガだと言うのに、すらっとしていて髪が長い。 え……? 目が大きくて鼻筋が高くて、これイケメンだよね? しばし、皆で息を呑んで見惚れてしまった。 「初めまして。吉沢達也と申します。この度はお時間をいただいてありがとうございます」 颯太をつついた。 「え、あ、俺が立花颯太です。芸名はゆおんです。よく来てくれましたね」 「どうぞ座ってください。ざっと紹介しますね。俺は彼の夫の立花陽一です。 ではミツワの広報スタッフは自己紹介をお願いします」と俺。 全員に自己紹介をしてもらった。 「颯太から話す?」 「先生からうまく話して」 「はい。実はね、メールをもらってから広報スタッフと協議をしたんだけど、うちは歌手が颯太だけで、他のタレントや歌手を育てたりするノウハウがないんですよ。 君を引き受けて面倒を見るのは、全然かまわないんだけど、肝心の才能をどう活かしたらいいのかなと思った時に、隣の浅田タワーのNatsuさんに、お願いした方が活きるんじゃないかなと思ったんだよね。 知ってるかな? Natsuさんのこと」 「はい、もちろんです。素晴らしい声で憧れています」 「それで明日の5時に、隣の浅田タワーのきらら小ホールで、君の歌を聞きますって言ってくれたんだよね。 その時にトレーナーも連れてきますという事でした。だからオーディションと同じだね」 「うちも君のことは何も知らないので、もう少し詳しく教えてもらえますか?」 「はい。もちろんです。履歴書を書いてきました」 それをスタッフが受け取り、人数分をコピーしてくれた。 そしてしばらくみんなで履歴書に目を通した。 「出身は東京なんですね。家族は……あれ、いらっしゃらないの?」俺は驚いた。 「はい、そうなんです。両親は小さい時に事故で亡くなっていて、俺は母方の叔母の家で育ったんです。 それで、いつまでも厄介をかけるわけにはいかないので、高校を出たし早く独立したいんです」 「そうなんだねえ。大変だったね。あのね、もし歌手がダメになっても大丈夫だよ。 俺が面倒を見るから安心して」 颯太が急にやさしいことを言うから、吉沢君がうるうると涙ぐんでしまった。 ティッシュを渡した。 「すみません。こんな事を人に言われたのが初めてなんです。うれしいです」 もう涙が止まらなくなってしまった。 少し待って、「お茶飲んでください」と山下さんが声をかけてくれた。 履歴書に良いことが書いてあった。 「趣味にダンスって書いてあるけど、何年くらいやってるの?」と俺。 「中学の時からです。習っているわけではないので自己流ですが、ネットで見たりして真似しています」 「へえ~そうなんだ」 みんながうんうんと頷いていた。 「明日会う浅田夏輝さんについて、少し話しておいた方がいいと思うんだけどね。 彼は歌手でもあるし、医者でもあるんだよ。 そして浅田工業の跡取りらしくて、浅田タワー全体の理事をやっているんだよね。 だから音楽事務所ももちろん彼が責任者なんですよ。 もし彼が認めてくれたら、あとは任せるつもりなんだけど、いいかな?」 「はい、喜んで。ありがたいです。どんなことでも頑張るつもりです」 「他に何か楽器とか経験があるの?」と颯太。 「キーボードを弾きますが、これも自己流なので恥ずかしいのですが、自分の歌の伴奏を弾いたりしています」 「へえ~」と感心してみんなの声が揃った。 きっとダンスや楽器も正式に習いに行けなかったんだろう。 でも好きだからいろいろと頑張ったんだねえ。 すごく根性のある子だ。感心した。

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