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第23話 Natsuさんのオーディション
翌日、早めにミツワに来てくれた吉沢君と、浅田タワーのきらら小ホールへ向かった。
すごく緊張しているみたいだった。
「リラックスしていいんだよ」と、颯太が優しい声をかけていた。
でもまあ、無理だよね。
きらら小ホールに入ると、夏さんや他の数人の方がすでに待っていた。
うちは広報スタッフも全員くっついて来た。
成り行きを見守りたいのだそうだ。
夏さんがにこやかにそばに来てくれた。
そして向こうのスタッフがじっと吉沢君を見つめていた。
今後のスターになれるのか?という最初の洗礼を受けているのだろうか。
夏さんによると、他者からの推薦は始めてなのだそうだ。
吉沢君は少し照れて視線を落とした。
「こんにちは。よく来てくれましたね。夏です。よろしくお願いします」
と吉沢君と握手を交わした。
そして向こうのスタッフを紹介してくれた。
「立花さんもありがとうございます。うちのスタッフをご紹介しますね。
アニメプラスの社長で桐生さん。マネージャーの村瀬さん。
事務所スタッフの神崎さん、クリエーターの藤堂さん。
音楽や舞台のトレーナーでみずきさん。
同じく舞台監督のレオさん。
あとはステラビートを数人連れてきました。
大勢なんですけど、期待が大ですからね。楽しみにしていました」
「わ~すごいですね。ありがとうございます。
うちは広報スタッフの4人を連れてきました」と俺。
始めて会う人も数人いたので、それぞれ自己紹介をしてもらった。
「では早速始めましょうか? 吉沢さん、舞台に上がってもらえますか?」と夏さん。
「はい」
彼は覚悟をしたように舞台にあがった。
真ん中に立つと、なんと客席が暗くなりスポットが彼に当たった。
ここまでする?
「吉沢君は何を歌いますか?」と夏さん。
そしてその曲が流れてくると、真ん中のマイクに向かって歌い始めた。
やはり美しい声だった。
スローで甘い曲は声に合っている。
客席で浸りながら聞いていた。
「もう一曲聞かせてくださいね。なにかUPテンポが良いですね」と夏さん。
そして流れてきた曲で歌う。
結構テンポが激しいね。
そして、それが終わると、
「じゃあね、少し踊ってみましょうか? なにが踊れますか?」と夏さん。
厳しい……いきなりか。
吉沢君は何か曲名を伝えていた。
ステラビートがぞろぞろと舞台にあがった。
そして曲が流れてきたが、皆の中で中心に立って、なかなかうまく踊っていた。
俺には詳しくは分からないけど、ステラビートはプロだからね。
その中で急に踊れと言うのは厳しいよね?
それでも踊れるもんなんだね。
曲が終わると、夏さんが手をパンと叩いて、
「はい。結構です。終わります」
吉沢君が息を切らしながら戻ってきた。
「頑張ったね」と声をかけた。
彼は声も出ずに頭を下げて、そして椅子に座った。
汗をふきながらも、彼の足は緊張の為か震えていた。
どういう返事が来るのか?
夏さん達が皆で集まって何やら喋っていた。
5分ほどすると夏さんがやってきた。
「ミツワさんでは、彼をどういう風にしたいんですか?」と聞かれた。
「うちでは彼の才能を活かすノウハウがないんですよ。
それで、できればこちらで彼を預かってもらって、プロの歌手に育ててもらえるとありがたいんですが、どうでしょうか?」
「はい、そういう事でしたら、喜んでお預かりしますよ。
彼は声が良いし、中々センスもあるし、これからみっちりと磨けば良い歌手になれると思います。こちらで契約してもいいんでしょうか?」と夏さん。
「はい、ぜひお願いします。吉沢君、いいんだよね?」
「はい、うれしいです、どうぞよろしくお願いします」
深くお辞儀をしていた。
「ところで、どんな契約になるんでしょうか?」俺は思い切って聞いた。
「まず、歌やダンスの基本レッスンを1年くらいはしていきますので、それからですね。最低限の給料は出ます。取りあえず、うちのレジデンスがあるので、そこに住んでもらえば生活が楽だと思いますよ。無料ですから」と夏さん。
「吉沢君、いいの? 引っ越す?」
「はい、喜んで行かせていただきます」
顔中が笑顔になった。やったね!
手続きは翌日にすることになった。
帰り道、「夏さんに吉沢君がオメガであることはメールで伝えておいたからね。
多分良いようにしてくれると思うから安心して」
「はい、ありがとうございます」と吉沢君。
頬が自然に緩んでいた。うれしいよね?
「__そういえば、颯太は何にも喋らなかったな」
「そうだった? えへへへ」と颯太はごまかしていた。
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