25 / 40

第25話 契約に密着

 午後12時50分。我々は浅田タワー9階のアニメプラスの会議室にお邪魔した。 もちろん颯太、弁護士、広報スタッフ、今回は広報課長の加納さんもお出ましだ。 そりゃあそうだろう。 将来50億もかかるような事業になるかもしれないんだ。 お手本を見ておかないと何も言えないよね。 吉沢君も緊張した面持ちで座っていた。 5分前に夏さんや、桐生さん、佐伯さん、村瀬さんなどのスタッフの人が入って来た。 こちらは直立不動だよ。大勢で押しかけてしまった。 「皆さんお待たせしました。あれ? 弁護士さんもご一緒でしたか?」と夏さん。 くすくすとちょっと笑ってしまった。 「なんか広報と一緒に見学したいのだそうです」と俺。 夏さんも笑っていた。 「せっかくですから、どうぞ契約書の方をご確認ください」と桐生さんが気を使ってくれた。 「なんか、押しかけてしまってすみません」 山川弁護士もちょっと居心地が悪そうだった。 でも差し出してくれた契約書を確認していた。 「はい、結構です。ありがとうございました」 夏さんの視線が俺と合うと、一緒に頬が緩んでしまった。 「皆さんがいらっしゃるとのことで、一応契約書のコピーを用意しましたのでご覧ください」と桐生さん。 頂いたコピーを皆で目を皿のようにして見ていた。 給料は月に10万円だった。 そこから税金、厚生年金、健康保険料などが引かれるから、恐らく手元には6万くらいなのかな。 ただし、寮は無料だし光熱費も要らない。Wi-Fi付き。 朝食付きで昼と夜は福利厚生で1食400円の弁当がある。 すると食費が24000円か。 でも普通は家賃が55000円、光熱費が1万かかるとすると、実質は165000円の給料をもらっていることになる。 これは初任給としては普通だよ。 しかも安い弁当付きだから余程普通よりいいことになる。 家事をしなくて済むんだ。その分、練習が出来る。 部屋はホテルだから、清掃してくれてタオルも変えてくれる。最高だよね。 誰が見てもすごく良い待遇だと言える。 吉沢君本人も契約書に目を通していた。 「吉沢さん。一応この契約書はうちの顧問弁護士のチェックを受けています。今読んでもらって、なにかご不明点はありますか?」と桐生さん。 さすがの貫禄だ。社長だもんな。 「あ、いえ、何もありません。これでお願いします」と吉沢君。 「ではサインと実印をこちら3枚にお願いします。 その中の1枚は誓約書になります。主にマスコミやSNS対応、ルール違反等の確認です。 それから契約書は1年間になっています。 これは今後1年間の間に基礎練習をしてもらって、終わった時点でどう売り出していくか? という段階になりますから、2年目からはまた別契約になります。いいでしょうか?」と桐生さん。 「はい、結構です。それで住まいは2年後もレジデンスに入れていただいたままでもいいんでしょうか?」と吉沢君。 「はい、いいですよ」と桐生さん。 吉沢君はさらさらとサインをして実印を押していた。 そして広報の田代君は早速一部始終を録画していた。 今日はずっと録画するんだって。 契約は10分程度で終わり、 「では今後頑張ってください」と桐生さんから激励を受けていた。 「はい、ありがとうございます。頑張ります」と吉沢君。 「じゃあ、すべてご案内しますから、先にアニメプラスの事務所に行きましょうか? 吉沢君も一緒に見学してください。全体が分かりますからね。あとでトレーナーや仲間に紹介しますね」と夏さん。 皆でゾロゾロとアニメプラスの事務所に伺った。 俺も初めてだ。部屋に入ると皆さんが立ち上がって会釈をしてくれた。 「じゃ、紹介しますね」と夏さん。 一人一人、名前と役割を丁寧に説明して教えてくれた。 田代君は必死でそれを録画していた。山下さんは録音係。 万が一録画を失敗した場合を考えたそうだ。(笑)えらい! ファンクラブ対応はメグちゃん。 俺も知っている熱血メグちゃんだ。 アイデアがすごいよ~。

ともだちにシェアしよう!