36 / 40
第36話 颯太の計画変更
颯太は木曜、金曜、土曜とレッスンを三日間やって、身体中に湿布を貼ることになった。
湿布を剥がすと、
「痛っ! 痛いよ、そっとやって、そっと」とうるさい。
俺の一大仕事になった。
なんせ1日に2回は貼り替えるからね。
でもかわいい颯太だからしょうがない。
そしてその夜、一緒に湯船に入っている時に、颯太がなんだかもじもじしていた。
「どうしたの? トイレ?」
「ううん、違うの……」
「じゃあ、どうしたの?」
「あのね、すごく言いにくいんだけど、怒らない?」
「はは、怒るわけないでしょう? 颯太の事なら怒らないよ。言ってみて」
「あのね。子供の事なんだけど、卒業前に作りたいって言ってたでしょう?」
「ああ、言ってたね」
「それをちょっと伸ばしてもいいかなあ?」
申し訳なさそうに小さくなって言う。
ぷーっと吹き出したかったが我慢した。
「どうしたの?」
「俺さ、今まですごく踊れてたのに、休んでる間にすごく身体がなまっちゃってさ、言う事聞かないんだもん。俺悔しいの。俺だって、前はいっぱい歌って踊ってたでしょう?」
「うん。そうだったね。俺もコンサートでちゃんと見たよ」
「だからさ、前と同じようになるまで頑張りたいの。
だから子供はもっと後でもいいかなあ?」
ウプッ……ここでバンザーイをしたかったが我慢。
「いいよ。俺はぜんぜんかまわないよ。だって颯太はまだ若すぎるもん。
歳相応に好きなことをもっとやった方がいいよ。子供はいつでもできるからさ」
「そうなの?」
「うん、そうだよ。若さが勿体ないよ。あと5年、10年と遅くなっても子供は出来るよ」
「うん、わかった、じゃあお願いね」
「良いよ。颯太の思うようにしてね」
するとくるりと振り返って、颯太からキスをされた。
もう笑いが止まらない。うれしい。
颯太に子供が出来たら、確実に4年は俺が拘束される。
すると俺の計画が全然進まない。それは痛手なんだよね。
計画は颯太には絶対内緒なんだけどさ。
というか誰にも内緒だ。ヒ・ミ・ツ!
良し、これで少し時間が稼げるな。
それにしても颯太に欲が出たか。ほう〜。
それなら盛大にアーティストとして精進してほしいよ。
何のために隣にホールがいっぱいあるんだよ。
勿体ない。せっかくアニメプラスに入ったんだし、
好きなだけホールで練習すればいいんだよ。
来週のレッスンは時間を2倍に増やしたいのだそうだ。
へえ〜、夏さんや桐生さんが聞いたら泣いて喜ぶぞ。
俺もうれしいけどね。
ところで、吉沢君はどうなんだろう?
実はすごく気になっている。
夏さんや桐生さんに託してきたけど、今頃は何か困っていないかな?
プロに交じっていきなり素人がダンスをするって、相当厳しいはずだよね。
ちょっと覗きたい気もするけど、邪魔してもいけない。
颯太は特別扱いでパーソナルトレーナーがいて、自分のペースで出来るけどさ。
きっと容赦ないはずだ。中途入社ってそういうもんだよね。
ともだちにシェアしよう!

