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第38話 碧人サイド・陽菜の声
その日はいつものように大学が終って陽菜の病室に行った。
陽菜がニコニコしていた。
「うん? なんか良いことがあったの?」
するとベッドの上をずりずり身体をずらして横向きになり、
端っこの方に来たら、手で身体を少し起こして足を床に降ろした。
そしてそっと立った。
「ええ? なあに? 出来るようになったの?」
驚いた。いつの間に起きれるようになったんだ。
でもそっと抱きしめた。
「うれしいねえ、陽菜が少しずつ治って行くね」
「うん」と頷いた……え?
「今、うんと言った?」
「うん」精一杯声を出してくれた。
「ああ~陽菜、声が出せるようになったじゃん。すごいよ~」
また抱きしめた。
そしたら、後ろで「コホン」と声がした。
「え?」振り返るとパジャマ姿の女の子が立っていた。
「あれ? 君は誰なの?」
「えへへへ、お邪魔虫ですぅ。隣の部屋の華ちゃんでーす!」
陽菜の顔を見たらくすくす笑っていた。
「陽菜、彼氏がいたの? いいなあ~」だって。
それから3人で喋った。
陽菜も微かに声を出したり、タブレットに書き込んだりで楽しかった。
華ちゃんも陽菜と一緒に同じ学校に行くと聞いて本当にうれしかった。
もう友達が出来たんだね。
学校もこれで一人ぼっちじゃないんだ。
チャットのみっちゃんもいるしね。
今度の通信制のクラスは陽菜も楽しく行けそうだ。
俺はなんだか肩の荷が降りたような気がした。
そして颯太さんの生家に帰ってきた。
由紀さんが「あれ? なんか良いことがありましたか?」と聞かれた。
鋭いなあ~。
「はい、陽菜が微かに声が出るようになったんです。
それに隣の病室の女の子と友達になったので、一緒に学校に行くそうです」
「うんまあ、良かった。本当にそれはうれしいですねえ」と由紀さん。
テーブルについていた小林さんも、
「それはすごいことですね。友達が出来たら学校に行くのも楽しいでしょうねえ」
「そうなんですよ。なんか陽菜が転校して、今度からそこに行くと言ったら、華ちゃんもそこに行きたいって言って、院長先生から両親に伝えてもらえないかとお願いしたらしいんですよ。
それで転校が出来たんだそうです。もうめちゃくちゃ喜んでいましたよ」
「へえ、そうなんですねえ。院長先生は本当にやさしいですからね」と小林さん。
そして用意されていた夕飯は牛丼だ。
めちゃくちゃうまい!!
「うま~い!」と叫んでしまった。
外の牛丼とは全然違う。お肉がいっぱい入っていて味もうまい。
ああ~幸せだ……。
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