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第40話 佐倉里奈ちゃん

  颯太に朝食を食べさせて、それから上川さんのメールを見せた。 「ええ? 16歳なのに通信制の高校で、しかもバイトまでしないといけないの?」 颯太の表情が途端に曇った。 「うん、大変だよね。やっぱり事情があるんだと思うよ。 普通の高校ではバイトを許可していないところが多いからね。 やっぱり本人に会って、事情を聞くしかないよ」 「そうだよね。俺、電話してみるよ」 メールには電話番号と名前が出ていた。 名前は佐倉里奈さん。 電話はすぐつながった。 結局、午後14時に青山の佐久間総合病院まで、来てもらうことになった。 日曜日だから正面玄関は締まっているけど、見舞い客用の入り口がある。 俺たちが行くと、もう里奈さんが来ていた。 「お待たせしました。佐倉里奈さんですか?」 「はい、わざわざすみません。ご迷惑をおかけします」と気遣う女の子だった。 小柄で真面目そうな感じがした。 「じゃあ、院長室に行きましょうか」 「はい」 すごく緊張しているようだった。 部屋に入って改めて自己紹介をした。 「初めまして。俺は颯太の夫で、この病院の院長です。 立花陽一と言います。よろしくね」 「はい、よろしくお願いします」 里奈ちゃんが丁寧にお辞儀をした。 「よく来てくれましたね。颯太です。 メールをありがとう。俺を頼ってくれたんだね?」 「あ、あのう……面識もないのに、本当に申し訳ありません。 でもどうしていいのか、もう方法がわからなかったんです。最 後の望みでした」 小さくなって、切なそうな表情だった。 「通信制の高校となっていたけど、何という高校なの?」 「四谷の第一学園です」 「あれ? 陽菜ちゃんと同じ学校だよね?」と颯太に聞いた。 「うん、確かにそうだったね」 え? とちょっと不思議な表情になった里奈ちゃん。 「ううん、なんでもないよ。それで里奈ちゃんのおうちのことを少し教えてくれますか?」 途端に表情が沈んでしまった。 「あのう……3年前に両親が離婚して、母が私を引き取ってくれたんです。 でも今度再婚することになって、向こうも連れ子の男の子がいるので部屋も狭いし、私もなんだか居づらいんです。 それで高校を辞めて通信制にして、働きながらお金をためて独立しようと思ったんです。 でも水商売しか仕事がなくて……大人の男の人も怖いし、バイト先も飲食業しかないんですよね。 でもヒートになるとどうしても休むことになるから、怒られちゃうんです。 それでクビになっちゃって、次がなかなか見つからないんです。 未成年なので難しいんですよね。そういう状態です……」 __俺も颯太も言葉を失ってしまった。 「かわいそうだねえ。つらいよねえ」 颯太が慰めると、里奈ちゃんが涙ぐんでしまった。 本当にかわいそうすぎるよ。 手元のティッシュを渡した。 「颯太、これさ、生家にもう一人頼んでもらえないかな?  だって16歳だよ。一人で暮らすのも危ないし、経済的にも無理だよ」と俺。 「うん、そうするよ。行き場がないよね。 仕事が見つからないと一人暮らしも出来ないしさ。 でも16歳だと本当に仕事がないと思うよ」と颯太。 「じゃあ、俺ちょっと小林さんに電話してくるよ」 颯太が電話を抱えて部屋を出た。 「里奈ちゃん、コーヒーは好きかな?」 「はい、好きです」 「じゃあ、今淹れてあげるね」 「すみません」 颯太がすぐ部屋に戻ってきた。 「あのね、『どうぞ来てください』だって。 それと、ちょっと相談があるから来てほしいんだって」 「ふ~ん、じゃあ『後で行きます』って伝えてくれる?」 コーヒーを里奈ちゃんに出した。 「すみません。いただきます」 「うん、飲んでね。 後で颯太の実家に行くんだけど、そこで里奈ちゃんを預かってもらうよ。 だから心配しなくていいよ。それにバイトはもう探さなくていいよ」 「え? でもそれでは申し訳ないです」 「大丈夫。細かいことはあとでゆっくり考えるから、 とにかくバイトはもう探さないでくれる? いいところを探してあげるからね」 「はい。分かりました。ありがとうございます」 里奈ちゃんがホッとしたような表情を見せてくれた。

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