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第44話 未来の準備
翌日、早速上川秘書に小林さんからの依頼の件を伝えた。
そして佐倉里奈ちゃんの件も話した。
「まあ、なんてことでしょう。颯太さんが優しいから、みんなを助けちゃいますねえ。私も本当にうれしいです。
社宅や学生寮の件は承知しました。見つかり次第ご連絡します。
それから本宅の一部改築の件も承知しました。本家がにぎやかになりますねえ。家政婦さん達もさぞ喜ばれていることでしょう」
上川秘書は本当にうれしそうに言った。
それにしても、執事の小林さんの鋭さには舌を巻く。
俺が何も言わなくても、すでに俺の計画の“下準備”をさっさと進めてくれている。
これは、早めに俺の計画を話した方がいいのかもしれない。
そうしないと、中途半端にお金をかけることになり、二度手間になる恐れがある。
颯太から言い出してくれることを願っていたが、小林さんの方がずっと上手で、未来を見据えた行動は本当に素晴らしい。
逆に、こっちが置いてけぼりになりそうだ。
──そうだ、今夜にも話してみようかな。
正直、まだ早いんだけどね……。
颯太が午後の“家庭教師”の勉強を終えた頃、ミツワに迎えに行った。
「お疲れ様。颯太、疲れたんじゃない?」
「ううん、平気だよ。だって座ってるだけだもん」
へえ……ちょっと変わったな。
「ちょっと佐久間病院に寄って、陽菜ちゃんの様子を見に行かないか?」
「うん、行く。俺も気になってたんだ」
病室に行くと、ちょうど碧人君が来ていた。
「陽菜ちゃん、どうですか?」と颯太が聞くと、陽菜ちゃんが口を動かして、声を出そうとしている。
「え? なあに?」
「……い・い・で・す」
絞り出すような声が出た。
「え〜? 声が出るようになったの?」
颯太が驚くと、碧人君も陽菜ちゃんもにこにこしていた。
「良かったねえ〜。もうちょっとだね」
「先生、陽菜ちゃんはいつ退院できるの?」と碧人君。
「そうだねえ、あと1か月くらいかな。
もしかしたらね、陽菜ちゃんの部屋の奥の和室をちょっと改装工事するんだよ。
多分、音がうるさいと思うし、人の出入りも多くなるから、工事が終わるまでは病院にいた方がいいと思うんだよね」
「あ、そうなんですか?」と碧人君。
「うん。それとね、昨日また新しい子が入ってきたよ。
佐倉里奈ちゃんっていう16歳の女の子でね、なんと! 陽菜ちゃんと同じ高校の1年生なんだって」
「わ〜」
陽菜ちゃんがパチパチと拍手して喜んだ。
「部屋は陽菜ちゃんの隣だよ。とてもいい子だから、きっと陽菜ちゃんと友達になれると思うよ。
そのうち病室に会いに来るように言っておこうか?」と俺。
「はい」
絞り出すようなハスキーな声で返事が返ってきた。
「じゃあ、今度連れて来るよ」と颯太。
「あ、チャットすると良いよね? 聞いておくね」
そして俺たちは「お邪魔虫だから」と先に部屋を出た。
病院の通路を歩きながら帰る途中で、
「颯太、今夜ね、すごく大事な話があるんだよ。聞いてくれる?」
颯太が驚いたように俺を見つめた。
「なに? いやな話だったら、俺絶対聞かないよ!」
もう泣きそうな顔をしている。
「違うよ。いい話だよ。颯太にとっては素晴らしい話だよ」
「なあ〜んだ。それならいつでもいいよ」
がらっと態度が変わった。
この落差……ちょっと笑っちゃうね。
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