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第46話 ミツワ未来財団

翌日の午後、颯太は家庭教師に休んでもらって時間を作った。 そして山川弁護士、上川秘書、小林さん、颯太、俺のメンバーで会議をする。 「一体何事なんですか? ドキドキしますねえ」と山川さん。 「私も同じ気持ちです」と小林さん。 「颯太から話す?」 「うん、最初だけ話す」 「ではお願いします」 颯太は姿勢を正し、はっきりと言った。 「私、立花颯太は、困っている弱者たちを助けるために、〈ミツワ未来財団〉を作ります。 資金はすべて俺が出します。細かい計画は先生から話してください」 皆、口を開けたまま固まっていた。 「では、大まかな青写真をプリントしました」 俺は資料を配りながら説明を始めた。 ◆ 計画概要 1.立花家の本家以外の土地を財団が借りる 賃料は少額だが支払う。 2.道路際に7階建てのビルを建設 1階:クリニック、80席ホール、応接室、受付会計、事務所、ロビー 2階:保育園、ベビールーム、厨房、ナースステーション、ダイニング 3階:弱者用ダイニング、厨房、リビング、大浴場、ヒート静養室4室 4~7階:弱者の個室(親子部屋あり)。最上階は女子専用。 3.家政婦アパートを2階建てに建て直し(10室) 4.植物用の温室 5.園芸道具の物置 6.蔵の建て直し 7.カフェの建設 8.イタリアをイメージしたショップ 9.本家を減築して建て直し(立花夫婦も住む) 10.中央の土地に観光ガーデン デザイナーは大谷梨々子さん。 植物は3年計画で育成。 スタッフは主に弱者を採用する。 立花紗奈・香菜も未来ビルで働く。 立花クリニックは陽一が責任を持って維持し、 内科・精神科・耳鼻科などを佐久間病院から派遣してもらう。 ☆シャトルバスを1台導入し、駅とガーデンを1時間に3本で結ぶ。 「以上ですが、皆さん。どうでしょうか?」 「わ~すごいですねえ、いつの間に考えたんですか?」と山川さん。 「それは、颯太がお金を全く使わないので、 寝かせておくより社会に還元した方がいいと、初期のころから思っていたんですよ」 「素晴らしいです、院長。社会に還元するなんて……」と上川秘書。 「あのう……こうなると、敷地の赤外線ガードなどはもう不要になるのでしょうか?」と小林さん。 「いえ、それはまだ考えていませんが、セキュリティは別の方法でも入れられます。 観光部分と本家は完全に分断して囲います。出入りも出来ません。 蔵は本家のそばに置いた方がいいと思います」 「山川弁護士、この立花家の土地をほとんど貸与するということですが……、 全部の土地を盗られることはないんですよね?」と小林さん。 「はい、大丈夫です。立花家の土地は永遠に分断してはいけないし、守られるべきものです。 契約書にも“絶対に手放さない”と明記します。 たとえ立花ご夫妻が亡くなっても、土地は立花家のものとして守られます。 盗られる心配はありません」 「はあ……良かったです。 あと、美術品を展示して盗難にあう心配は……?」 「そこは建築家に厳重にガードしてもらい、警報や警備員も配置します」と弁護士。 「もちろんです。警備は厳重にします。 そこに居るのは弱い弱者たちですから、スタッフもビルも守らないといけない。 美術品は……見せてもいいのかなと思ったんですが、やめた方が良いならやめますよ」と俺。 「ああ、いえいえ、そういうことではなく…… なんだか天地がひっくり返るようで、頭が混乱しているだけなんです」と小林さん。 すると颯太が、静かに、でもしっかりと言った。 「小林さん、俺ね……、 貰った財産を大事に持っていた方がいいのかなって思ってたんだけど、 先生の話を聞いて、眠らせるだけじゃ誰も助けられないなって思ったの。 惜しげなく見せて、それで盗られたらしょうがないよ。 もう要らない。なくてもいいもん。 でも出しておくと、みんなが楽しめるでしょう? とっかえひっかえ展示してもいいのかなって思ったんだよね」 ……良いことを言ってくれた。 胸が熱くなった。 颯太は確実に大人になっている。 「はい、そうですね。颯太様がそうお思いなら、私は何も申し上げません。 颯太様と先生の方針通りで結構です」と小林さん。 やはり、変わっていくのがつらいのだろう……。 「小林さん、いいんですか? 庭をひっくり返しちゃうのでね。 景色を変えてしまうので申し訳ないのですが、 このデザイナーは素晴らしいデザインをしてくれます。 多くの人の目を楽しませてくれると思うんですよ。 弱者の人も皆で庭仕事をすれば、仕事としてできる。 ヒートになれば休んでいいし、クビになる心配もない。 そんな職場、社会にないじゃないですか? だから皆つらい思いをしている。 でもこの計画をすれば、80人くらいは採用できる。 仕事をシェアすれば120人くらい助けられる。 颯太はたまたま立花家に生まれて、裕福に過ごして成功した。 でもそれは“まれな一人”なんですよ。 だから皆が颯太を頼って来る。 それで、この計画を思いつきました。 どうでしょうか? 皆さん、ご協力いただけるでしょうか?」 そして── 皆さんが拍手をしてくれた。

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