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第53話 海外の患者

 昨日の落胆から一夜明けて、また気を取り直した。 負けるもんか。 日本中探してやる__くらいの気持ちが湧き上がってきた。 とはいえ、どこに伝手があるわけでもない。 とりあえず夏さんが教えてくれた、建築プランナーの仕事を見せてもらおう。 気に入らなければ、他のプランナーに頼めば良いくらいの気持ちになった。 今度は落胆したくないかった。 北原院長にメールを送った。 「お手隙の時に電話をいただきたい」 すぐ折り返し電話がかかってきた。 「お早うございます。きのう理事から聞いていますよ。 建築プランナーをお探しだとか。 先に出来上がったところをご覧になりませんか? めちゃくちゃすっきりときれいになったんですよ。 前にご覧になった時、無理に詰め込んでごちゃごちゃになっていたから驚かれたでしょう? それがどう変わったのか、見に来てくださいよ。 今日は菜の花病院にいますから、何時でもいいですよ」と北原院長。 「はい、それでは今から伺ってもいいでしょうか?では30分後に伺います」 厚意的に言ってくれたんだけど、それでもまだ信じていなかった。 それくらい、肝心のミツワに断られたことがショックだった。 まあそれだって、俺の勝手な根拠のない期待感が原因だった、と分かってはいるんだけど。 しかし、まだ“何のためのミツワだよ”という気持ちもあった。 それくらいのキャパはあるはずと、簡単に思っていたんだよなあ……。 やがて菜の花総合病院に着いた。 院長は1階のロビーで待っていてくれた。 笑顔で迎えてくれる彼は、本当に美しい。 なんでこの世にこんな人がいるんだろう……。 「お早うございます。お久しぶりですね」 「はい、そうですね。早速の対応をありがとうございました」 「いえいえ、では見に行きましょうか? 本館の5階を見ていただくのが分かりやすいと思うんですよ」と院長。 本館の5階と言えば、前回来た時はなぜか高級感のあるフロアなんだけど、 妙に区切ってあって、狭苦しい診察室が詰め込まれていたところだ。 あの時、思わず「ここは……?」と院長に聞くと、 苦笑いで「これが苦労の結晶ですよ。分かります?」と言っていた場所だ。 そして5階に着いた。 フロアに入ると、あれ?内装に何も変わりはないけど、普通に規則正しく診察室が並んでいた。 「すごいでしょう?なんと、普通のフロアになったんですよ!」 「ああ、本当ですね?前がどうだったのか、分からなくなっていますよね?」 「もう__もっと褒めてくださいよ。俺は本当に感激したんですよ。 ここだけじゃなくて、あっちこっちのレイアウトは壊れるし、 診察室は足りないしで、もう四苦八苦だったんですから」 「はあ、まあそうでしたね」 残念ながら、うちはそれほどの人気もなく、診察室を増やす必要がない。 だからその苦労は全然分からない。 「なんか診察室のモジュールが壊れてるって言われたんですよ」と北原院長。 「モジュールですか?」 「はい、診察室には一定の決まった大きさがあるというんですよ。 俺が苦肉の策で、それを壊して詰め込んでいたんですよ。 それで動線が悪くて使い勝手が悪くなっていたらしいです。でもみんな文句を言わないんですよね。 だけどそれが重なってね、まともにしてくれと副院長から怒られましてね。 それでも浪人専攻医の診察室も足りないし、 来年は内科の専攻医を3人も入れると宣言されるしでね。 また三つを増やさないといけなくなったんですよ」と、北原院長。 「へえ〜苦しいですね。何とか待ってもらえないんですか?」 「それがねえ、なかなか難しいんですよ。医者のメンツがねえ……」 「はあ、そうでしたか、ご苦労されていましたね」 「いえいえ、それで未来さんは病院や施設のプランや設計が得意らしくてね。 パソコンであっという間に素敵なフロアを見せてくれたんですよ。 それで、この”普通のフロア”に見えるように作ってくれた、ということが俺的には凄いと思っているんです」 「はあ、そうなんですねえ」 正直、全然分からなかった。 佐久間病院ではそんな苦労をしたことがないんだもん。 その後は、海外の患者向けに家族も一緒に過ごせるという、二部屋を繋いだ病室を見せてくれた。 それは2号館に作られていた。 海外の患者?へえ、何だろう。うちはほとんど来ないな。 聞くと、心臓の手術の為に来たのだそうだ。 「ここもね、四苦八苦していたんですよ。 海外の患者は本人と家族も一緒にやって来るのでね。 部屋も用意しないといけないし、フォローもいるんですよね。 スタッフもチームを作って必死に対応しました。 自費患者なのでこちらも相当気を使いましたよ」と北原院長。 あ、そうか。海外の患者は全部自費なんだなあ。 え? とすると、いくらかかるんだ? ___どう考えても総費用が2千万以上か? 信じられない!

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