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第55話 大手も準大手でも無理?
「お話は大体分かりました。
やはり建物ではビルが一番時間がかかりますから、まずはラフプランを作りましょうか?」
未来さんの言葉に、思わず返事が詰まった。
「あ、ご心配なく。ただのラフですし、これでお金を頂こうとは思っていませんから」
その優しい言い方に、胸の奥が少しだけ緩んだ。
「すみません……実は昨日、あてにしていたミツワに断られて、次に浅田工業にも断られて……頭が混乱しているんです。
伝手もないし、どちらも“1年以上着手できない”と言われて、正直ショックで。
大手なら当然できると勝手に思っていたんですよ。
でも夏さんに未来さんのことを伺って、お話だけでもと思って……」
未来さんは、こちらの動揺を受け止めるように微笑んだ。
「ああ、分かりますよ。大手建設さんは何千億円規模の事業を抱えていますからね。
会社総出で取り組んでも手一杯なんです。
準大手も大手から仕事を回してもらうので、同じように引っ張られてしまう。
だから“できません”と言われても不思議じゃないんです」
「え……では、どうしたらいいんですか?」
「普通は、大手であっても最初の“建築プラン”は外部に委託するんです。
一番大変なのは最初の段階。
お客様の要望、ご家族の状況、そこに暮らす人の性格、目的、趣味、好み……
これを丁寧に詰めていかないと、土壇場でひっくり返ることがある。
だから時間がかかるんです。
大手はそこに時間を割けない。だから外部に任せるんです」
未来さんの声は落ち着いていて、聞いているだけで不安がほどけていく。
「外部でプランを作って、詳細の指示書まで作る。
そこまで整えば、あとは資材の発注、人員の手配、運搬のスケジュール調整……
最後に建設に入るだけです。
土地の検査も必要ですし、基礎工事が一番大変ですからね」
そして、少し照れたように笑った。
「手前みそですが、僕は一級建築士です。
最初から最後まで全部お世話できます。
信頼している業者もたくさんあります。
大手や準大手じゃなくても、ちゃんとやってくれるところはいっぱいあるんですよ」
「……はあ、そうなんですね。俺は無知でした。
それにしても、説明がうまいなあ〜」
正直に言うと、未来さんはくすくすと笑った。
俺もつられて苦笑した。
「一般の方は知らなくて当然ですよ。
では、ビルのラフを作ってみましょうか?すぐできます」
「え?すぐ?」
「はい、プロですから。お任せください」
未来さんは迷いなくパソコンを開き、建築アプリを立ち上げた。
「7階建てでしたね?敷地の大きさは決まっていますか?」
「全然です。ただ……土地が港区の高台に1万坪あります」
未来さんの手が止まった。
「え?港区の高台に……1万坪?
そんな土地、どこに隠れてたんですか?」
目を丸くする未来さんに、今度は俺がちょっと笑った。
「じゃあ、ラフは後にして、先に颯太の生家に行きましょうか。
土地を見ないと始まりませんよね?」
「はい、お願いします」
その場で小林さんに連絡し、上川さんに生家に向かうと伝えた。
今日は颯太の家庭教師の日。
どうしようか……生家に来てもらってもいいけど。
颯太には「大学が終わったら連絡をくれ」とメールを送った。
そして、未来さんと一緒に生家へ向かった。
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