57 / 60

第57話 江戸時代の深井戸

 皆で昼食を取ったあとは、敷地を案内することにした。 颯太はミツワの個室で昼寝してから、家庭教師と勉強すると言っていた。 偉いぞ、颯太。 未来さんは正面の外から見て、ずっと録画をしていた。 そして本家のまわりを隅々まで観察していた。 SPさんに「待機所はどれくらいの広さが必要ですか?」と質問していた。 するとSPさんが申し訳なさそうに言った。 「出来ましたら、シャワーがあるとありがたいんです。 暑い季節は汗びっしょりになるんですよ」 「あ、そうですよね。すみません、気が付きませんで」と小林さん。 するとSPさんはさらに恐縮していた。 これはうちも同じことだな。別途、取り付けないといけない。 作る順番は、本家・蔵・SPの待機所・壁。 次は温室と物置。 「あのう、温室は苗を育てるためですか? それとも温室で花を見せるためですか?」と未来さん。 「ああ、それは漠然と苗を全部買うと経費が掛かるから、 少しは自前で育てた方が良いのかな?と思っただけなんです。 まだ大谷さんには何も申し上げていないんですが」 「そうですか。そしたら、なるべく早くお会いできるといいですね。 これだけ大きな庭になると、少々作っても追いつかないと思うんですよ。 いっそ苗は本職に任せて、ベゴニアなどの温室育ちの花を見せた方が、 秋から冬にかけて観光客に見せられますよ」と未来さん。 「ああ、なるほどね」 「それと、あとは物置になっていたんですが、 多分スタッフ用のトイレやシャワー室が物置近辺にあった方がいいと思うんですよ。 つまり、泥の付いた長靴を履いたまま使えるトイレですね。 昔の農家にもあったと思うんですよ。 作業途中で長靴を脱がなくても使えるトイレは助かると思うんです。 それと、ちょっと暑くなると汗だくになりますから、シャワーも用意して、エアコンの効いた休憩所もあった方が熱中症対策にもなると思うんですよね。 だからロッカーも入れた方がいいですよね」 「はあ、なるほどねえ」 さっきから同じような返事をしているんだけどね。 気が付かないことが多くて、感心するばかりだった。 そして、井戸の前に来た。 「すごいですねえ!これ、江戸時代からあるんじゃないですか?」 小林さんが首をひねっていた。 「それはちょっと分からないですね。明治の頃に買ったらしいんですけどね」 「恐らくですね。これは深井戸なんですよ。地下の水脈に届いていると思います。 ここは江戸時代の上屋敷か下屋敷跡じゃないですか?井戸は屋敷の真ん中に作るんですよ。 多分、古地図を見ると分かるかもしれませんね」と未来さん。 「うわ、そうなんですか?それは凄いなあ」 俺は思わぬ事態に驚くばかりだった。 「では調べてみましょうか?」と小林さん。 「はい、お願いします。ところでこれは水質検査はされているんですか?」と未来さん。 「そうですねえ、多分20年前にした気がしますね」と小林さん 「では専門家に依頼して、水質検査と水量などの調査をしてもいいでしょうか? 出来れば、この井戸をきれいに作り直して江戸櫓を作って、周りを整備すると良いと思うんですよ。 そして、この時代の説明図などをパネルで展示すると良いですよね。 これは立花家の立派な財産ですよ。 多分、井戸水が使えるなら大谷さんも仕掛けを考えるだろうと思うんですけど、 その前に使える水量を調査しないといけないんですよ。 調べてもらっても良いですか?」と未来さん。 「ああ、もちろんです。お願いします。 やぐらなんて素敵ですね。そんなに生き返るんですね?」と俺。 「そうです。災害時にはこの水で多くの人が助かると思いますが、 無尽蔵ではないですからね。 その辺は水量を調べないといけないんですよ」と未来さん。 「ほう~」と俺と小林さんが声を揃えた。 なんだか未来さんが張り切っていた。

ともだちにシェアしよう!