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第62話 ご近所回りの重責

  碧人君はスカウトしたし、陽菜ちゃんにも話したし、少しはホッとした。 小林さんが会議の5分前に会長室にやってきた。 「お早うございます」 「今日はね、人材についていろいろ決めたいんです」と俺。 「あ、そろそろですよね。決めましょうか」 「実はね、碧人君をリーダーとしてスカウトして、 陽菜ちゃんにもビルに住めることを伝えたんですよ」 「ああ、それは喜んだでしょう。では佐倉里奈ちゃんは?」 「まだですね。カフェのために家政婦さん達から料理を習っておいて、とだけ伝えてあります。 財団の話は今夜にしましょう」 「そうですね、きっと喜びますよ」 「それで小林さんには、財団の事務局長をお願いしたいんです。よろしいでしょうか?」 「ほう~それはありがたい。微力ながら務めさせていただきます」と小林さん。 「そして山川弁護士にも、財団の法務と雇用関係をお願いしたいんです。個室も作ります」 「それは願ってもない事ですよ。絶対に必要です」と小林さん。 俺は隣の部屋をノックした。 「はい、お待ちしてましたよ」と弁護士。 ぷーっと吹き出した。 筒抜けだったかな? 「すみませんねえ。ちょっとお越しいただけますか?」と俺。 山川さんはニコニコしながら会長室に入ってきた。 「いや~置いてけぼりかと思ってヒヤヒヤしてましたよ」と山川さん。 「そんなわけないじゃないですか」と俺も笑った。 「2階の半分は眼科。残りは理事長室と法務室です。 書棚、机、ソファ、金庫、全部揃えますよ」 「はいはい、全部頂戴します。電話とパソコンとコピー機もお願いしますね」と山川さん。 「はい、承知しました。会議室は20人規模で。 必要なら折り畳み椅子も入れましょうか?」 「いいですね」と小林さん。 「それで小林さんには、1階の事務室で全体の采配をお願いしたいんです。 碧人君や、ミツワから派遣してもらう広報スタッフ4名と連携して── ホールの宣伝、運営、会計、問い合わせ対応、困った人の相談窓口。 これらをまとめていただきたい」 「ほう、小林さん、メチャメチャ忙しいじゃないですか?」 山川さんが言うので、二人で苦笑した。 「寮に入りたい人が集中すると思うんですが、財団の理念として条件を満たさないと困るんですよ。 だから山川さんに、細かい決まり事や給料体系をお願いしたいんです。 正式に社長にも支援をお願いしないと」 「はいはい、分かっていますよ。仕事は山ほどあります。 給料体系、採用人数、福利厚生の手続き……全部やります。 財団は関連子会社にしてもらう必要がありますね。 それと調理師は朝5時半から夜20時まで働きます。 シフト制でも、ガーデンのそばに寮が必要ですよ」と弁護士。 「あ、そうなんですねえ。そこまで考えていませんでした。 小林さん、どうしましょう。寮が必要ですね。またお金がかかりますよ」と俺。 小林さんがしばらく考えた。 「ではこうしましょう。立花家の財産管理部にお願いして、 至急近辺の土地か建物を取得してもらいましょう。徒歩5分以内で。 土地も建物も立花家の資産とし、それを財団に安く貸す。 これなら問題ありません」 「……あ、ちょっと待ってください。青写真ができたらですね── 先に道向かいのお宅へ、颯太さんと先生で挨拶に行かないと駄目です。 “これから3年ほど工事でご迷惑をおかけします”と。 菓子折りを持って。 そして別封書で、 “敷地や家をお譲りいただけませんか。一般の不動産業者より高く買わせていただきます。 代わりのお住まいは責任を持ってご用意します” と立花家からお願いするんです。 弁護士の1時間2万円無料券も入れておく。 相続相談も承ります、と。 あの辺りは老人世帯が多いでしょうし、固定資産税も高い。 子供は駅近のタワマンに住んで動かない。 反応はありますよ。 文面は私が作りますので、先生、頑張ってください」と山川弁護士。 ちょっと頭を掻いた。ああ大仕事だ……。 「はい、颯太と頑張ります」

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