72 / 81

第72話 歓喜

会長室に戻る途中、上川さんに声をかけた。 「上川さん、広報の5人を呼んでもらえますか?」 「はい、かしこまりました」 上川さんも、もう顔がほころんでいた。 きっと事情を察してくれているのだろう。 颯太が小声で言った。 「先生、あの5人……絶対すごく喜ぶよね」 そして、ほどなくして5人が揃ってやってきた。 「なんだろう?」という顔が並ぶ。 「とりあえず座って。颯太、言ってあげて」 颯太は満面の笑みで立ち上がった。 「うん。あのね── 社長にお願いして、皆さん5人とも、財団に来ることになりました!」 一瞬の静寂。 そして── 「わーい!! バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!!」 5人が一斉に立ち上がり、叫び、跳ねた。 あまりの大騒ぎに、山川さんと上川さんまで覗きに来た。 拍手喝采。 笑顔の渦。 喜びが部屋いっぱいに広がった。 「良かったねえ。先生がすごく社長にお願いされてたよ」 山川さんが笑う。 「本当にありがとうございます!! すごくうれしいです!」 山下さんは目を潤ませていた。 「ああ、やったーー!!」 他のメンバーも声を上げる。 俺は手を叩きながら言った。 「こちらもうれしいですよ。今後ともよろしくお願いします。 ──ちょっと座ってね。今後のことを話します」 5人が勢いよく席に戻る。 「広報には新たに2名採用するそうです。 そして1年かけて引継ぎをしてほしい。 手に余ることは、並行して皆さんが対応してほしいとのことでした。 ただ、居場所は財団でいいと社長がおっしゃっていました」 「なんてうれしいんでしょう……!」 岡本さんが胸に手を当てた。 俺は続けた。 「それで、颯太の音楽関係の仕事も、財団の事務所で一緒にやってもらえますか? ミツワから広報の仕事が来たら、それもお願いします。 社長は“臨機応変に”と言っていました。大丈夫ですか?」 「はい!!」 5人の声が揃った。 息がぴったりだ。 本当に仲が良いんだな。 「では、財団の骨子もまとまったので、これから細かい部分を詰めていきます。 毎日のスケジュールだけど……どうしようか?」 小松さんが手を挙げた。 「必要な時に誰でも呼んでください。情報は共有して動きます」 石井君も続けた。 「先生や颯太さんのそばにいた方が、細かい話がしやすいと思います。 ある程度、日にちや時間を決めていただけると助かります」 「じゃあ、午前10時から1時間ほど会議をしましょう。 出来ない日もあるかもしれないけど、それでいい?」 「はい、承知しました!」 声が揃う。 本当にチームだ。 「それでね、どんどん思いつくことを細かく書いていってほしい。 今後は全面的に相談して考えてもらおうと思っています。いいですか?」 「はい、どんどんお申し付けください!」 スタッフたちは上機嫌だった。 「まずは人材募集のタイミング。 医者やナース、技師を募集するから、早めに予告を出したい。 応募する側もこちらも、予約のような形にできるといいと思うんだが……どうだろう?」 「それは助かると思います。先々の計画が立てやすいです」 「じゃあ、明日の午前はその話をしましょう。考えておいてください」 「はい、承知しました!」 5人は勢いよく頭を下げて戻っていった。 山川さんが笑いながら言った。 「いや~、やたらに嬉しそうでしたねえ。 そりゃミツワの広報より、財団の仕事の方がずっと楽しいと思いますよ」 「そうでしょうか?」 「そうですよ。私も財団の方が仕事が多くて飽きません。 もっといっぱい仕事くださいよ」 思わず笑ってしまった。 「じゃあ、もうなんでもやっていただけますか? 全部お任せしますので、お願いしますよ」

ともだちにシェアしよう!