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まるで2人だけの世界のよう
シメサクにとって、今回のセットリストは最高だった。
シメサクは興奮して、「最高ー!!」などと叫びながら乗りに乗っていた。
葵も手拍子をしつつ、時折体を小刻みに揺らしたりして、楽しんでいた。
最高潮の盛り上がりの中、ライブはあっという間に終わった。
メンバーが退場するやいなや、手拍子とアンコールが湧き上がった。
シメサクは負けじと「アンコール!アンコール!」と声を張り上げる。
すると、葵がシメサクの耳元でこう聞いた。
「アンコールって何ですか?」
「もっと歌を聴きたいときにアルコールって言うと、再登場して演奏してくれる魔法の言葉だよ。」
「魔法の言葉…。」
葵は小さく呟いた。
「あ、ほら!出てきた!」
再登場した彼らが再び演奏を始めた。最後の曲は、最高に盛り上がるアップテンポの曲であり、会場内が熱気に包まれた。
「楽しいね!!」
シメサクは、葵に聞こえるように大きな声で言った。
「はい、楽しいです!」
葵は、大きな声を出すのが苦手な様子で、シメサクの耳元に顔を近づけて答えた。
葵が楽しんでいるのを知って、シメサクのテンションはさらに高まった。
シメサクは、今までにないくらい凄く楽しくて堪らなかった。
その気持ちの高まりを大声に乗せ、でもそれは爆音と歓声にかき消される。それでも、もっと大きな声を出す。
隣には笑顔の葵がいた。
コンビニで見かける時や、昨晩駅前で見かけた時からは想像もできないくらいの笑顔だった。
誘って良かったとシメサクは心から強く思った。
葵は、シメサクの袖を掴んだままずっと離さなかった。
鳴り止まない歓声と音楽、会場内を照らした色とりどりの照明。それらが渦となって2人を包んだ。
こんなにも騒がしいのに、まるで2人だけの世界のようだとシメサクは感じた。
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