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第4話 弓道大学大会。

 久しぶりに弓道の大会に出場すると満月の心は一番勤しんでいた頃のことを思い出す。  あの頃は自分の全てを弓道に費やしていたので、良く言えば何にも無心で取り組んだが、悪く言えば弓道以外の何にも興味が持てない無関心だった。  例え弓道以外の他に興味がなくても、それなりに充実していたと思っていたが。  満月は弓を引き構えて的を狙う。  ここだというときに矢を放つ。  狙った中心から若干外れてしまったものの、それでもフォームは美しく、放たれるときの音は澄んでいた。  けれど満月は腕が訛ったことにブランクを感じ平常心が揺らいでいた。  再度的を狙い射るも、若干のズレが生じ上手くいかないことに焦りを感じずにはいられなかった。  以前満月が弓道を辞めた理由は、自分はこの道を極め、これ以上の上達は見込めないと思い込んでいたからだ。  自分がまさかここまで鈍るなど思いもしなかった満月は、三度息を整えてから狙い、そして矢を放った。  ここでようやく丁度ド真ん中をようやく捕らえ射れた満月は、胸を撫で下ろした。  美月は見ていたのだろうか、こんな情けない弓道をする自分を。  見ていたなら今日のことは忘れてほしい、満月は心の底からそう思っていた。  そして弓道大学大会は終わりを迎えた。  満月が助っ人として参加した大学の弓道愛好会は団体戦初めての三位入賞に喜びを分かち合っていた。  それにしてもだ、選手休憩の時間に弓道大会社会人の部優勝者のデモンストレーションを満月は見たが、その上手さを知っていれば、満月は弓道を辞めなかったかもしれない。  そう思うくらいの達人と言える人だった、そう思い頭の中でその人のフォームを浮かべた。 「君が夜霧 満月選手だね。確か二年前の試合で全国制覇した」  頭の中で想像していた相手が、声を掛けてきていたことに気付いた満月は我に返って挨拶をした。 「はい、その夜霧で間違いはないです」  すると来賓のその相手は片手を出して握手を求めてきた。 「私は弓道社会人大会の優勝をさせてもらえた日向 太陽(ヒナタ タイヨウ)です。仲良くしようね、夜霧君」 「はい、よろしくお願いします」  背格好は誤差程度に太陽が満月よりは低いものの、それでも大男には違いなかった。

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