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第5話 悪夢の加害者。

 大会中美月は満月の姿ばかり目で追っていた。  美月自身そのことを自覚していたし、そしてどんなに満月の弓道の腕前が鈍ろうとも、自分にとって満月の弓道は特別に違いはなかった。  それにしても、休憩時間に来賓ゲストのデモンストレーションを見たが、どことなく自分と似ているフォームなのに驚きを隠せなかった。  美月も中学生から大学まで弓道をやっていたが、極道一家の長男という立場から、それを隠しながら部活をしていた高校一年のときの大会以外は出場していなかった。  部活やサークルで美月は妙な目立ち方をしていたから、そのときに自分のフォームを見て真似されたのか……、いや真似をされたというのは、些か自意識過剰な思い込みだろうと思い直した。  丁度その時見失っていた満月の姿を視界に入れた美月は、一瞬にして凍りついた。  今朝見た悪夢の加害者に似た人物と満月は親しそうに握手をしていたのだ。  美月はあの時に感じた、噎せ返るような男子更衣室の情景を思い出し、満月に声を掛けるのを諦めて距離を置き身を返したのだが……。 「美月さん?」  満月の視界にも美月を捕らえていたようで、直ぐに声を掛けられた。  さすがに無視をするわけにもいかないと思ったので、出来るだけの微笑みを浮かべながら返事をした。 「団体戦入賞おめでとう。お前の個人戦出場が無いのが勿体なかったな」  美月は感情を悟られないよう無難な話題を振ったのだが、それがいけなかった。  何も知らない満月は太陽を紹介した。 「美月さん、こちらさっき知り合ったばかりの弓道大会社会人優勝者の日向 太陽さん。この方のデモンストレーション見ましたか?!とても凄かったですよね」  美月は動揺を隠しきれなくて、目を伏せた。 「……美月さん?どうかしたんですか」  すると太陽はスッと美月の正面に立つと、話しかけてきた。 「北白川、久しぶり。元気だったか?」

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