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第6話 過去の亡霊。
太陽は当時と変わらない笑顔のままだった。
満月も見ているし、不安にさせたくない。
そして過去の弱い自分を詮索されたくない、そんな思いから視線を合わさずに美月は太陽に返事をした。
「……久しぶり。相変わらず君は変わらないね、日向くん」
そう、日向は何も変わっていない。
だから美月はあの頃に戻ってしまったように身体を震わせ、視線すら合わせられなかった。
そんな美月と余程視線を交わしたかったのか、太陽は彼の震える手を取った。
「あのときのことを北白川に謝罪したかった。俺はお前がどんな状況で過ごしていたのか知らなかった。本当に悪かった、ごめんな」
躊躇なく簡単にそう謝罪されて、美月の身体には悪寒が走った。
あの頃ワイシャツの上から肩に触れられた手が、今は美月の手に直接触れられ、身の毛がよだつ感覚に陥り、手を払い除ける。
美月はあのときと同じ氷点下に満ちた殺気を込め太陽を睨んだ。
だが太陽はその冷たい睨みすら喜んでいた。
「やっと視線が合ったね。そう睨まないで、俺の話を聞いてくれ、北白川」
「っ……、俺からの話はない」
そう言うと美月は視線を逸らし、その場を立ち去った。
あのときのことを謝罪してきたとしても、あのとき美月が接してきていた苦難が消え去ることはない。
そして自分の過去を知る者 が今現在大切にしている満月 に接触してきたことがどうしても許せなかった。
少年時代に体験したことを思い出して、あのときと同じ不快感を思い出した。
美月は怯えながら、太陽に触れられた手を水で洗い流し、手を拭いたハンカチをゴミ箱に捨てた。
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