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第12話 一件のメール。

 その後場所を床の上からベッドの上に変え愛し合い、甘く幸せな一晩を過ごし、早朝を迎えた。  満月の腕の中で美月は目覚め、世界で一番幸せな気分で枕元に置いたスマートフォンを手にし、重要な案件がないか確認をした。   すると、見覚えのないアドレスからのメールが一件届いていた。  スマートフォンは悪戯メールやスパムメールからきたと判断させるものは全て迷惑メールフォルダに振り分けられるが、そのメールは迷惑メールフォルダに振り分けられるものではなかった。  そういう類のものではないようだ。  美月はそのメールを開いた。 『日向です。今日は挨拶と謝罪しかできなくて残念だった。晩に君の運営するサイトのサーバーを少し様子を見たけど、サイトのデータベースはとても良かったよ。けど俺ならもう少し上手く書き換えることができる。そのデータ案を持って明日北白川組のほうに伺わせてもらいます』  昨夜、あんなに満月に温めてもらったばかりの肌が、メールの一読で一瞬にして粟立ち、冷え切ってしまった。  そしてプライベートで使っているスマートフォンのアドレスに何故日向 太陽からのメールが届いたのか。  個人情報が漏れたのだろうか、と、美月は一層の不安に駆られた。 「美月さん、何かありましたか?」  ようやく起きた満月は腕の中に収まっている美月の様子がおかしいことに気付き、恐る恐る様子を覗った。 「満月、これから組の方に顔を出せるか?」  いつものテノール調の声色なのに、どこか違う雰囲気を感じた満月は、その美月の身体を優しく抱きしめて言った。 「はい。今日は日曜ですし、組に顔を出す予定でした」  満月は組員達に可愛がられているようだったし、最近は美月よりも北白川組の屋敷に出入りしている。  それを考えれば組に一緒に来てもらうことで、若頭北白川 美月通称『女狐』への風当たりは少し解消されるだろう。  それにしても何故表向きの会社ではなく、北白川組のほうに太陽が訪ねてくるのだろうか。  美月の不安は水面の波紋のようにジワリと広がった。

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