13 / 36
第13話 屋敷前に停まる車。
何にでも卒なく熟し、表情を隠すことが上手い冷静な美月が、北白川組の屋敷に出向くことに何故怯えているのだろうか、と、満月は少しだけ不思議だった。
美月自身その理由は満月には教える気がなかった。
だから満月はその原因は美月の祖父の北白川 美剣 のことだろうかと思った。
そう感じた根拠は、訪れた屋敷前に会長の車があったからだ。
きっと組に何かがあったのだろう。
しかし美月自身も美剣が屋敷に訪れていることに驚いた様子だったので、これが原因ではなかったのか、と、少しだけ胸を撫で下ろした。
美剣はいつも美月を可愛がろうと経験を積ませてくることを知っている。
二年前の元組長の大樹との抗争もそうだった、と、考えていた。
「若頭、おかえりなさい!!」
組員達は一斉に美月に挨拶をすると、満月には優しい美月もここでは残忍な極道者 だと実感する。
挨拶をする組員の前を素通りするスーツ姿の美月も美しいと感じているのは満月だけではない。
最近だと極道 美月に惚れてこの世界に入ってきた者も何人かは存在していた。
家を出る前に『今日はお前も正装な』と着せられた慣れないスーツ姿の満月は、ここではただの下っ端組員だった。
しかし美月は冷たい微笑を浮かべながら満月に言った。
「何してるんだ?お前も来いよ、満月」
ここで俺を特別扱いしないでほしいと満月は目で訴えながらも、言葉では素直に「はい」と従った。
「満月は今日から俺の付き人だ。そのつもりで堂々としてろ」
「はい」
目で訴えても美月の態度は変わらなかった。
そして美月の目の色もいつもと違っていることに気付いていた満月は『嫌です』と言えなかった。
まぁ、この極道 の世界で上に逆らう奴などは生きていけない定めではあるのだが……。
美月が通された部屋は、二年前大樹に襲われ、満月が射抜いた防弾ガラスのある応接間だった。
「久しぶりだなぁ、美月」
いつも通り美月の前では優しそうな祖父の顔になる美剣は極道 界のボスの一人には見えなかった。
「……。お久しぶりです、会長」
美月の瞳が一瞬不安に揺らいだ原因は、美剣の一歩引いたところに日向 太陽の姿があったからだったことに、満月だけが気付いた。
ともだちにシェアしよう!

