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第22話 異常な執着。
車内行為の後に美月はスマートフォンを確認した。
思った通り日向 太陽からのメールが届いていた。
『美月様
夜分に失礼いたします、日向です。
明朝より、あなたの運転手として務めさせていただきます。
明日からは、あなたが最も安らげる完璧な空間をご用意出来るように努めて参りたいと思います。
あなたの移動する数十分の間、その背中を私に預けていただける……、この日のために私は今日まで研鑽を積んで参りました。
若頭として、そして事業を経営なさる美月様がお仕事に集中できるよう、私は文字通りあなたの手足となって、お支えいたします。
明日の再会を、心より楽しみにしております。』
今日の朝に顔を合わせたときのように、太陽はスマートで完璧な男として自分の隣に控える気でいるのだろう。
その嫌らしさが滲み出ている雰囲気を感じ、美月は嫌悪に表情を歪ませた。
それにしても太陽は何故ここまで自分に執着しているのだろうか、美月はその原因がわからなかった。
太陽は『性の授業の後に美月を揶揄ってきたクラスメイト』ではあるものの、それだけの理由で、この執着は、ある意味とても不自然だと感じたのだ。
「かと言って、ここまでの異常な執着の理由を聞き出そうにも……な」
美月は満月が運転する助手席で独り言を放った。
このベントレーは公式標準装備右ハンドルで、今までのロールスよりも運転に余裕が持てている満月は、その美月の独り言に反応した。
「日向さんのことですか?」
「……まぁな。アイツがここまで俺に執着してくるような奴には感じなかったからなー」
美月の知る『日向 太陽 』は文系のスポーツタイプ、そして陽気な性格だったはず。
この十数年でここまで人は変わるものだろうかと、疑問に思ったのだ。
たとえ変わったとしても、そこまで心に残る何かが想像つかなかった。
「美月さんが聞けないなら、俺が聞いてみましょうか?」
素直過ぎる満月になら太陽ですら何の見返りもなく答えるかもしれない、そう美月は考えて頷いた。
「お前に余裕ができたら、それとなく聞いておいてくれ」
「はい」
満月は美月を愛している。
その愛している人の過去も気になっていたし、自分にその過去を話す気になれないことも気付いていた。
それならばこの因縁が解決したら話してくれるかもしれない。
自分なりに力になりたいと思う満月は、二年前と変わらず健気な青年だった。
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