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第23話 あなたを守る盾になりたい。

 美月は就寝前に仕事の確認をしてから、事務的なメールを太陽に送った。  メールを送らなければ、オートロックとはいえもしかしたらマンションの部屋前まで侵入してくるかもしれない。 『明朝 08:00 マンション地下駐車場。スペアキーは現地で渡す。遅れるな。以上』  あれだけ美月に執着している太陽だ、伝えなくてもマンションや駐車場は把握しているのだろう。  そう思い、あえて教えることはしなかった。  深夜にもかかわらず、数分後に早速太陽から返信があった。 『御意。  夢の中でも、あなたの背中をお守りしております』  その返信の速さに不気味さを感じた美月はスマートフォンを投げ捨てるように枕元に置いた。  一部始終を見ていた満月は苦笑をして美月と同じベッドに入った。  広すぎるはずのキングサイズのダブルベッドで、美月はまるで小さな子供のようで、満月の腕の中に収まるほど縮こまりながら眠る姿は、とても極道(ヤクザ)一家の若頭には見えなかった。  そんな美月は満月に守られていることに安心したのか、規則正しい寝息をたてて熟睡し始めた。 「……」  だが、一方の満月は眠れる気がせずにいた。  美月の長い髪に触れながら昨日からのことを考えた。  怯えきった美月の素顔を見て、俺にこんな素顔を見せてくれるのか、彼の弱さを自分には見せてくれるようになったことに、不謹慎ながらも嬉しく思いもした。  けれど自分がもっと強く頼りになる存在だったら、美月は怯えることすらなかったのかもしれない、と、考えていた。 「俺にもっと力があったら」  部屋の空気に溶け込むくらいの声色で満月は呟いた。  会長(ミツルギ)すら認めてもらえるくらいの強さが自分にあったら、もしかしたら日向 太陽は美月の前に姿を現さずに済んだのかもしれない。  愛する人を怯えさせる元凶を断てたのかもしれない、と思った。  『お前が美月の隣に立つ『盾』だと言うなら、最高の師から技を盗め』  満月は美剣に言われた言葉を思い出し、確認するように心の中で反芻する。 「あなたを守れる『盾』になれるのであれば、自分はどんなことでもする」  満月は腕の中で安心して眠る美月の額に口付けを落とし、ゆっくりと目を閉じた。

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