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第34話 助けを呼ぶ手。
美月は夢を見ていた。
自分でも見ているのは夢だと自覚するくらい、残酷な夢だった。
まわりは血の海で、その中に横たわる大きな身体は実父の北白川 美雅 の姿がある。
このとき美月は小学生だったはずだが、父親に触れた自分の手は今現在31歳の美月の手だった。
美雅の姿は世界で一番愛しく思う夜霧 満月 の姿に変わる。
自分を守るために命を落とした美雅、そしてこれから自分を守りたいと言ってくれた満月。
もしかしたら美雅と同じように満月も命を落とすかもしれない。
『俺は人に守ってもらう度、その人を失っていく運命なのかもしれない』、と、美月はそう思った。
美月のために殺人という罪を背負った元運転手兼用心棒 の田中 亮司 だって、義父大樹との抗争の最中に腹部を狙撃銃で撃たれた美剣の元秘書の町屋 秀彦 だって、美月のために傷を負った大切な人だった。
もし満月が危ない目にあって命を落としたら、そう思うと、美月は生きていく自信がない。
それでもどうしても美月は自分にはない『光』を求めてしまう、強くてかけがえのない『光』。
その『光』は自分に関わることで、輝きを失うと思うとどうしても怖かった。
「ふふ……。拒絶しながらも、快感に打ち震えるなんて。そんなあなたはとても美しい」
美しい月は今、太陽という眩しすぎる光に身体を暴かれていた。
ネクタイで手首を縛られ、細い腰をきつく両手で固定され、力尽くで腹の最奥をこの世で一番嫌いな相手の肉棒で突かれる。
「はぁっ……あぁん、っあ」
吐き気がするくらい嫌なのに、身体は快感を感じ先端から淫らに蜜が垂れ、絶頂を迎える。
どれだけ強い薬を盛られたのか、それほど美月の身体は善がっていた。
意識の端々で、自分の内側を蹂躙する熱い感触が吐き気を催すほど鮮明に伝わってくるのを感じる。
拒絶したい脳とは裏腹に、蜜を滴らせ、太陽の動きに合わせて腰を揺らしてしまう自分の身体が、何よりも自分を裏切っていた。
「北白川、……いえ、美月様。これでようやくわかったでしょう。あなたを支えるべき人間は、この俺なのです」
直腸から肛門にかけて欲望という肉棒を引き抜かれた瞬間に今までに感じたことのない快感を得てしまい、美月は言葉にならない喘ぎを上げた。
「っ……!!」
息が続かない、もう快楽なんて感じたくない、そう思っても、いうことを効かない身体を捨てたかった。
美月は縛られている両手を上げて、心の中で愛しい騎士満月に助けを呼ぶ。
「……まんげつ」
しかし今その美月の両手を握る手は闇騎士太陽だった。
「あなたの騎士ならここにいますよ、美月様。あなたの汚れた部分も、壊れた部分も、すべて受け入れられるのは私だけだ。あんな子供に今のあなたのこの姿、見せられますか?」
あぁ、なんて残酷な現実なんだ、と、美月は助けを呼ぶ手を下げた。
気が遠くなるラウンジで聞いたノクターンが、美月の脳内で壊れたレコードのように、繰り返し何度も鳴り響いていた。
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