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第46話 世界で一番綺麗なお金。
満月の体温を感じたことで、少しずつ落ち着きはじめた美月は、そのままゆっくりと話し出した。
「……俺はお前が思うような綺麗な人間じゃない」
『綺麗な美月さん』と美化し続ける満月。
愛する人を美化することは寧ろ自然なことだ、けれど自分は綺麗ではないことを知ったら、どんな反応をするのだろう。
「俺の裏稼業は、闇賭博 の元締めだ。お前と母親の月夜さんを助けた金だって、それで得た金だ」
軽蔑するか、それとも愛想を尽かすか。
いつだか『結婚詐欺とか?』と言っていた満月の思う裏稼業はとても可愛らしいことだと笑ったが、詐欺くらいの裏稼業だったら、どんなに良かったかと思う。
満月の表情を確認すると、驚いている様子だったが、返ってきた言葉は美月の思っていたものと違っていた。
「……それが、俺の命を繋いでくれたお金なんですね。だったら俺にとってそれは世界で一番綺麗なお金です。美月さんが闇の元締めだろうとか、そんなのは関係ない。俺と母を救ってくれたのは、あなたそのものです」
美月は満月は何を言っているのか、直ぐに理解ができないでいた。
「満月、……何言ってるんだ?」
混乱する美月をよそに満月はさらに続けた。
「出所のお金は綺麗じゃなくてもいいです。美月さんが助けたいと思ってくれた、その気持ちが俺は嬉しいと感じますし、綺麗だと思いました。母と俺の希望になったのには変わりはありませんから」
満月は微笑みながらそう言った。
彼はこんなにも楽観的な人間だっただろうか。
もしかしたら日常的に北白川組員 と親しくさせてしまう状況を作ったせいで、罪の重みを軽く思わせてしまったのだろうか、美月の中で無いはずの良心が痛んだ。
「そんな顔しないでください。美月さんが悪党なら、俺は悪党の愛人になるだけです。……もしかして俺からの愛が重すぎて引いちゃいましたか?」
満月は苦笑いで美月を見ていた。
『彼は自分をこれ以上不安にさせたくなくて、こんな言い方をしたのだろう』、と、美月は悟った。
満月はそれほどまでに優しい人間だった。
「お前はそれで本当にいいのか?」
自分にこれ以上関わってもろくなことにはならない、美月は満月に、警告の意味で伝えたのだ。
しかし満月の覚悟は決まっているようだった。
「美月さんがその闇にいるのなら、俺もそこに飛び込むだけです。その世界の主であるあなたを、これからは俺が一番近くで守る『盾』になります」
満月の決意はどうやら硬いようだ。
ここまで愛されているとは思っていなかった美月は、泣きたくなるほどに嬉しくなった。
もう二度と満月という『光』を裏切らないと心に決めた。
けれど『日向 太陽』という蛇が、すぐそこまで牙を剥いて迫っていることを、今の二人はまだ知らない。
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