48 / 62
第48話 静との対面。
いつ頃だっただろうか、確か満月が『北白川の猛戦士 』という渾名がついて初めての春を迎えた頃のことだった。
北白川組の屋敷に会長美剣の奥方の北白川 静 が美月を訪ねてきたことがあった。
極道一家の会長の奥方と言ったら、古風で着物の似合いそうな日本人女性を想像するだろう。
しかし静は落ち着いた上品なスーツに身を包み、そして綺麗な微笑みを浮かべた老婆だった。
美月と顔立ちは似ていないが、この老婆が美月の祖母だと言われなくても、わかりそうだと満月は感じた。
そのくらい漂わせる気品と所作、雰囲気が似ていた。
「お祖母様、お久しぶりです」
応接間で出迎えた美月はいつも通り綺麗な微笑みを浮かべていたが、静はその微笑みを叱咤した。
「美月さん、その笑みは組 では不似合いよ。また過去のようになってしまうのではなくて?」
「申し訳ありません。お祖母様にお会いできるのが楽しみで、表情が緩みました」
その言葉を聞いた静は、一瞬フッと目を細めた。
「そうなの。でも美月さんの顔が見れて安心しました。……それにしても、正座は疲れるわね」
屋敷の応接間は和室だった。
そして静は西洋かぶれだ、普段から正座はしていなかったので、大層疲れる。
「もしよろしければ、ダイニングにご案内します。いかがですか」
美月がそう言うと、ダイニングの方向へ組員が廊下に早歩きで通っていった。
その当時は前組長大樹の後処理に追われていた組員や美月が事務所でできない作業をダイニングでしていたため、書類等が積んであったのだ。
「そうしていただけるかしら。急に来たのに、片付けさせて悪いわね」
静はにこやかにそう言う。
「そういえば美月さんを手助けしたという、噂の青年は控えさせている子かしら?」
自分のことを言われているのだと思い、満月は一礼をした。
「夜霧 満月 です」
「申し訳ありません、お祖母様。お越しが急でしたので、制服のままなのです」
その頃満月は高校生だったため、学生服のまま美月の裏に控えていた。
「随分と浪漫のある名前なのね」
美剣が大層気に入っていた青年だったので、美月を訪ねた理由の一つなのだろう。
「応接間 の防弾ガラスを矢で射抜いたと聞いたけれど……、そんな凄味のある子には見えないわ。それに極道の世界 で生きていけるかしら、少し心配ね」
やはり普段の満月の表情や雰囲気は温厚過ぎて、静も半信半疑なのだろう。
静が屋敷に訪れる前に満月は美月に平常心でいろと言われ、その通りにしていた。
しかし次の言葉を聞いた瞬間、満月が必死に維持していた平常心は、音を立てて粉々に崩れ去った。
「あなた、ここで服を脱ぎなさい」
ともだちにシェアしよう!

