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第49話 品定め。
服を脱ぐ行為には少しだけ躊躇いがあった満月は固まった。
その理由は最近美月との情事が頻繁にあったのでその跡が身体に刻まれていたのだ。
風呂に入る際、背中が染みるので引っ掻き傷もあるだろう。
組員の誰もが美月と満月の間に身体の関係があることに気付いているとしても、流石に美月の部下達の前で服を脱ぐという行為ができなかった。
満月の思っていることを察した美月だったが、その彼が促すように言い放った。
「これは命令だ、満月。脱げ」
「……はい」
美月の面子を汚すことになったとしても、その本人からの命令ならば聞かざるを得ないと思った満月は、その場で制服を脱ぎはじめた。
現れた身体は高校生とは思えない作り込まれた靭やかな肉体だった。
「無駄も隙もない身体ね。背中の広背筋、僧帽筋、菱形筋も発達しているわ。弓道で重要なのは背中、あなたが防弾ガラスに矢を放ち貫通させた本人なのは間違いなさそう」
応接間の防弾ガラスは頑丈で、美月が生まれる前の話で故人美月の父親美雅 が狙撃された時すら貫通しなかったという話を満月は組員 達からも聞いていた。
「それにしても、随分と可愛がっているようね、美月さん」
背中の引っ掻き傷に触れながら、美月を誂う静を満月は睨みつける。
「……いいわね。野生の鋭さを秘めている、その眼光 もなかなかだわ」
「申し訳ありません、お祖母様」
満月のかわりに美月が謝罪すると静は納得したように微笑んだ。
「満月さん、私もあなたが美月さんの側にいることを許します。私の可愛い孫を裏切るようなことがあれば、あなたは後悔することになる、これは脅しではありません」
心を射抜くような凍てつく眼差しを向けた静に、満月は美剣よりも冷酷だと感じた。
『服を着なさい』と静に促され、満月は制服を正しはじめる。
「そのかわり、……満月さんが私の孫のために力を蓄える必要があるならば、私の夫 ではなく私を頼りなさい」
丁度ダイニングの支度が調ったようで、美月のところに声がかかったようだ。
「お祖母様、俺が紅茶を淹れます。ダイニングに行きましょう」
美月は立ち上がると、静に手を差し出す。
その所作は異国の王子のように優雅だった。
「美月さん、あなたまた髪を伸ばしなさい。そのほうが似合ってよ?」
「仰せのままに」
祖母と孫には感じさせない雰囲気で、その後二人は優雅にティータイムを過ごしていたのを組員達は眺めていた。
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